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朝日新聞 住まい/世界のウチ

車庫の上にある庭 2005.09.14

車庫と庭がある住宅といえば、敷地に余裕のあるお宅に見られるように、車庫と庭がそれぞれ別々に設けられた戸建て住宅を想像する人が多いだろう。ところが、もしその二つが一つになって車庫の上に庭があるとしたら、その状況をすぐに理解してもらうのは難しいかもしれない。あるいは最近注目されている屋上緑化を思い浮かべる人もいるかもしれないが、私の部屋の窓から見える車庫の上は、庭としてしっかり活用されている。

その理由はいたって単純だ。集合住宅の1階にある大きな車庫が中庭に張り出しているので、その2階に住むお宅が車庫の上を庭として使っているのである。この集合住宅のほかの家には小さなバルコニーが設けられているけれども、車庫の上を活用できるお宅はこの1軒しかないし、そこには木造の小さな物置のようなものまで建っている。

この庭は、高さが2メートルほどの木枠に囲まれているため、残念ながら私の部屋からはその内部までは見えない。だが、上階のお宅や近隣の集合住宅からの視線は十分に感じられる場所にある。もっともドイツの若い世代の人たちは、普段の生活を見られることに抵抗のない人も多く、夜になっても居間などのカーテンは閉めない家庭も増えつつあるから、抜群の視線を集めるこの庭も取り立てて問題にはならないのだろう。

ところで、ドイツではバルコニーや屋上テラスがある場合、その面積の半分を居住面積として加算することが多い。だから生活の一部として活用できる屋外空間があるというのは、貸す方にとってもその分の家賃が得られるので有益だし、借りる方にとっても、そういった環境が用意されているというのは魅力的である。

天気の良い週末になると、この車庫の上の庭からソーセージを焼く香りに乗って、時折、大きな笑い声や歓声が聞こえてくる。その様子は実際には見えないのだけれど、2階の居間から直接出入りするこの一風変わった庭は、十二分に活用されているようだ。ここは洗濯物もよく乾くだろうし、笑い声の絶えない、なんとも楽しげな車庫の上の庭である。

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