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朝日新聞 住まい/世界のウチ

台所は洗濯室? 2006.08.23

ドイツの大型家電を扱うお店に行き、洗濯機や乾燥機の売り場へ足を伸ばしてみると、そこには白い色の製品だけがいくつも並んでいることに気づく。例えば冷蔵庫やほかの家電製品などは、白以外が多いけれど、洗濯機や乾燥機で白以外のものを見つけ出すことは、ほぼ不可能に近い。実際ドイツでは、洗濯機や乾燥機、あるいは食器洗浄機のことを「ヴァイスゲレーテ(白物家電)」と呼んでいるから、ドイツで売られている洗濯機や乾燥機の色は白と決まっているのだろう。

色以外の大きな特徴は、洗濯機も乾燥機も水平ドラム式が主流だということである。最近では日本でも水平式がかなり普及してきているし、あるいは斜め式という洗濯機も見かけるようになったけれど、ドイツや欧州では、かたくなまでに水平式にこだわっている。その理由の一つは、水平ドラム式の洗濯機は台所のほかの電気製品と一緒に並べて置くことができるからだ。もちろんドイツでも、洗濯機を台所に置くのを嫌う人もいるし、大抵の住宅には地下室があるから、そこが洗濯室になっていることも多いけれど、オーブンや食器洗浄器などに交じって、洗濯機も一緒に並んでいるのを見ると、秩序を重んじるドイツらしさが何となく感じられる気がしてくる。

一方、日本では、洗濯機は浴室や洗面といった水周りに置く場合が大半ではないだろうか。給排水設備の関係から、洗濯機置き場の位置が決まっているのが大半だし、子供のいる家庭などでは、浴槽の残り湯を洗濯に使うことも多いことなどを考慮すると、浴室と洗濯機の位置は必然的に近くないといけないけれども、設備的なことさえ解決すれば、台所に洗濯機があるのは意外と便利なようにも感じられる。

お風呂に入る習慣のある日本と、シャワーだけで済ませる人が多いドイツや欧州では、浴室のつくりも違うし、洗濯機を置く位置も大きく異なっているところが面白い。だからドイツでは、料理をしている足元で洗濯物がぐるぐる回っているのは別におかしなことではないし、ピザが焼けるそのすぐ脇で洗濯が同時進行することもあるだろう。そもそもドイツの人の中には、あまり料理をしない人もいるから、台所が洗濯室としてだけ機能している家が存在する可能性も否定できないことを考えると、日本の人にとっては、その方が興味深かったりするに違いない。
 
一部加筆訂正 2009年8月3日

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