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新しいゴールドカード 2010.01.21

ゴールドカードといっても、銀行やクレジットカード会社が、お金持ちのために発行する特別なカードではない。ケルン市内に15か所ほどあるプールを運営する「ケルン水泳連盟有限会社」が発行するプリペイドカードのことである。これを購入すると最初に支払った額に応じて割引が受けられる。

種類は4つある。「Basic/ベーシック」、「Silber/ズィルバー」、「Gold/ゴールド」、「Platin/プラティン」で、それぞれの購入額と割引率は、ベーシックから順に35ユーロだと10%割引で、70ユーロは15%、140ユーロは20%、最も高い280ユーロのプラティンカードを買うと25%の割引が受けられる。これは同伴者にも適応されるので便利だ。

本題はここからである。私は20%割引が受けられるゴールドカードを持っていた。「持っていた」という過去形なのは、去年の夏に泳ぎに行ったときに、不用意にもジーンズの前のポケットに入れたまま着替えたら、誤って真っ二つに割ってしまったからだ。そして「ああ、面倒なことになったなあ」という予感は的中した。

受付に持って行くと、このカードを購入したときの領収証に書かれている証明書番号がないと再発行できないという。何年も前、このカードを購入したときに、「この発券証は、カードを紛失したり、損傷したときに必要になるから大切に持っておくように」とプールの受付で忠告してくれたお母さんを想い出した。「あの発券証ねえ、持ってたかなあ」というのが私の正直な気持ちだった。

レシートと同じような発券証を、おそらく捨てたりはしていないし、多分どこかに保管してあるはずだ。でも、もし見つからなかったら、1万円以上残っているお金は返ってこない。帰り道は足取りが重かった。部屋に戻り、気分を鼓舞しつつ、本棚にある「ケルン」という書類入れを何気に探したら、発券証がすぐに出て来た。そして自分の几帳面さにも感心した。

ドイツでは、どんな書類でも保存管理を徹底しておいた方が良いということを渡独前から聞いていたから、いつの間にか、その癖がついていたのかもしれない。以前にも書いたが、ドイツの人の書類の管理方法や整理整頓能力には、いつも感心させられる。日本の人だって同じかもしれないが、その理路整然さは圧倒的にドイツ人の方が高いと思う。

それはさて置き、後日、発券証を持って再度プールに行き、必要書類を記入して提出した。再発行にかかる時間については、担当者に直接訊いて欲しいということで、電話番号を渡された。数日後、そこに電話をかけてはみたのだが、それからほぼ5か月半が過ぎた今日、私はようやく新しいゴールドカードを手に入れることができたのである。それにしても長かった。

カードを受取るのが遅れたのには、それなりの理由がある。折ってしまった自分の責任を棚に上げて言わせてもらうと、まず、平日の朝9時からしか受取れないこと。つまり土日は不可である。しかも、本人の署名と引換えなので、受付に預けておいてもらい、好きなときに受取りに行くということができない、というこの二点に集約される。

確かに受取りは9時からというのも理解できるが、私は朝6時半に泳ぎに行っているので、7時半過ぎにはプールを出てしまう。泳ぎに行くのを遅らせると、7時半までの一般の早朝割引が受けられないし、仮に7時半少し前に泳ぎに行ったとしても、泳ぎ終わった8時半から9時まで30分も待つのは微妙に面倒だ。そんなこともあって、ずっと20%割引を受けないまま泳ぎに行っていたのである。

年も明けたことだし、もういい加減に受取りに行こうと思い、重い腰を上げて昨日電話したら、出た男性は明日の8時半でも良いというではないか。9時前は無理だと言った別の女性はどこに行ったのか。受付で事情を説明し、新しいカードを受取りたいと説明すると、受付の反対側にある管理室から、その男性がすぐに出て来た。歩いて5秒のところにいたのだ。

その男性はしっかりと握手を求めてきた。残金の84ユーロを、二桁も違う84セント(0.84ユーロ)と間違えてしまったのはご愛嬌だが、再発行の手数料として10ユーロと、申請した日の入場分一回を減額するのは忘れていなかった。受取るまで5か月もかかったと言ったら、その男性は、2007年に申請して、まだ受取りに来ていない人がいるから、あなたは早い方じゃないかと言う。

ともかく、残金が71ユーロになった新しいゴールドカードが手に入った。これがないときは泳ぎに行く気力が沸かなかったが、これからは、またどんどん泳ぎに行こうと思う。20%の割引が受けられないことで、こんなにも気力が削がれるとは思ってもいなかったし、もう少し早く受取りに行けば良かったと反省もした。

自宅に戻り、改めて気になったのは、カードの認証番号の長さである。23桁もあるのだ。申請するときも「やけに長いなあ」と思っていたけれど、16桁で納まるクレジットカードよりも長いなんておかしくはないか。しかもカードには、番号の刻印もなければ、バーコードもないというのも混乱の原因だと勝手に思ったのである。

話は長くなったが、新しいゴールドカードが5か月振りに戻ってきて、作業にも少し身が入った一日だった。

加筆訂正:2010年7月25日(日)

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