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還流独歩

夕暮れ散歩 2010.03.21

夕方、外で食事をしたあと、久しぶりに隅田川の方へ散歩に行った。茅場町から永代通りを東へ歩くと、永代橋がかかる隅田川までは10分もかからない。普段は日本橋方面に行くことが多いのだが、反対の門前仲町の方へ行く機会は意外と少ない。人の行動範囲というのは面白いもので、すぐ近くなのに少し方向が違うだけでまったく通らない道や、知らない場所がたくさんあったりする。

永代橋からは建設中の東京スカイツリーがよく見える。スカイツリーという名前はあまり好きではないので、ドイツ語にしてみる。直訳すると「ヒンメルバウム」になる。ヒンメルは空、バウムは木である。日本の人が良く知っているのにもかかわらず、ドイツではほとんど見かけることのないバウムクーヘンとは、木の焼き菓子ということだ。隅田川沿いを歩きながら、そんな他愛もないことを考えた。

目の前には大川端リバーシティがそびえている。この地区の再開発が始まったのは、確か20年くらい前だったと思う。当時、門前仲町の居酒屋で飲んだあと、酔い覚ましに清澄通りを月島に歩いて行くことが多く、その辺りの時期からずっと工事をしていたところだ。そして、バウムクーヘンのことを考えたら、目の前の超高層マンション群が、何となく背の高い巨大なケーキに見えてきた。

それから南高橋という何とも言えない古さを携える鉄骨の橋を越えて、隅田川沿いを南に向かって少し歩いた。不思議なのは、この辺りに建っている住宅や中層の建物のほとんどが、隅田川に対して閉じていることだ。理由は良くわからないけれど、水面を楽しめるような開放的な空間を持つ建築があっても良いように思う。

今日は春分の日だというのに、夕方の風はひんやりしている。日も暮れて寒くなってきたので、八丁堀を抜けて帰ってきた。八重洲通りを渡るとき、東京駅の方に目を移すと、数年前にできた超高層ビルが、今日も夕暮れ空に四角い姿を映し出していた。

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