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還流独歩

ライン川と10年間 2010.05.29

10年ほど前にケルンで知り合った友人と、彼の1歳になる子供と一緒にライン川へ散策に出かけた。散策といっても、ちょっとした散歩の延長のようなものである。彼の子供と1月に会ったときには、つかまり立ちができるようになっていて、いまは一人でも歩けるまで成長した。子供の成長とは早いものである。

今日はケルン市内の一番北側にある橋の近くまで行くことにした。ライン川の川岸に広いシートを広げると立派なピクニックだ。ここに来ると、あらゆる交通機関が眺められる。目の前を流れるライン川は、観光船や貨物船が頻繁に往来し、すぐ近くの橋の上には車だけでなく市電も走っている。そこには両岸を行き交う自転車も見える。

最も大きな交通手段は、真上を通り過ぎる飛行機だ。ケルン・ボン空港へ着陸体制に入った低空の飛行機が、徐々に高度を落としながら15km程先の滑走路に向けて、ほぼ真上を真っすぐに飛んで行く。でも1歳になる彼の子供は、まだ良くわかっていないのか、目の前にやってくる鳥の方が気になるようだ。指差しをして何か喋っている。

とある偶然から彼に出会って10年という月日が流れ、その間、彼にも私にもいろいろな変化があったけれど、彼の子供を見ていると、何だか言いようのない不思議なつながりを感じると同時に、それはまた自分にとって、目の前をゆったりと流れ行くライン川のように、ゆっくりだけれど、大きくて深いうねりだったように思う。

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