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還流独歩

中庭の交流と防犯 2010.05.30

今日は天気が目まぐるしく変わる一日だった。雨が降ってきたかと思うと、しばらくして日が射すなど、天候の変化がとても忙しかった。夕方になって、西日から急に横殴りのような日射しが街を照らし始めた。そしていままで暗かった裏庭に強烈な西日が差し込んできたので、思わず台所の横の窓を開けて外の様子を見始めた。

すると、中庭を挟んだ反対側に住んでいる家族も窓から顔を出してきた。その距離は60−70mくらいだろうか。1歳くらいの子供がいるのも見える。私が手を振ると向こうも振り返してきた。小さな手が揺れている。それほど大きくない窓から大人が二人と子供が顔を出しているのは、とても微笑ましい光景だ。

何度か手を振り合ったあと、それとなく互いに窓を閉めた。中庭を介して反対側に住む親子との、ほんの些細な交流だったけれど、少し優しい気持ちになれたし、お互いに知らなくても、中庭という閉じた空間を通じて、何となく親近感が湧くものなのだ。直接の近所付き合いではないけれど、 中庭には共有感のある雰囲気があるからだろう。

日本では、防犯上の問題から、集合住宅などではできるだけ閉じることが求められているけれど、防犯に最も効果的なのは周囲の目ではないかと思う。ドイツの中庭が常に安全だとは思わないけれど、囲まれた空間を介して互いの家のことが少しでもわかれば、それが防犯につながるのかもしれないと思ったりするのである。

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