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還流独歩

泳ぐ前の準備運動 2010.07.15

「ジュンビウンドー。 ニホンジン? 」。そう話しかけられたのは、ケルンでいつも泳ぎに行くプールでのことである。ケルンには日本文化会館という国際交流施設があり、そこでは日本語が学べるから、ケルンにいるとたまに日本語で話しかけられたりもする。その人と少し話をしても良かったのだが、ケルンの人は話し好きが多いし、泳ぐ前だったので「ヤーヤー(そうですよ)」と言うだけで、深入りするのはやめた。

話は本題に移って、私は泳ぐ前に必ず準備運動をする。でもドイツの人は全くしない。いや、別に準備運動などしなくても何の問題ないと思うが、「これから身体を動かしますよ」という指令を身体中に伝搬させることは大切だと聞いたことがあるので励行しているだけである。もっとも、日本でも泳ぐ前に準備運動をする人は決して多くはないが、それでも誰かは必ず身体を動かしているのを見かける。一方、ドイツの人は、何もしないでそのまま泳ぎ始める。

ところでいつだったか、別のプールで前屈をしていたら、「それはヨガの一種かな? 私もヨガを習っていたことがあるのだが…」と初老の男性に話しかけられたことがある。私はどう答えて良いのかわからず、ことばに詰まってしまった。ドイツでもヨガを習っている人は多いし、スポーツをする人なら運動をする前に必ず身体をほぐしたりするはずだ。でも、この男性にとって私の準備運動がヨガに見えたのだろう。

日本には誰もが知っているラジオ体操なるものがある。子供の頃から習うし、テレビでも毎日やっているから、多少は忘れる部分があっても、だいたいのことは身体が覚えているはずだ。私は中国に行ったことはないが、公園では多くの人が太極拳らしきものをやっているというから、みんな揃って一緒に身体を動かすというのは、もしかしたらアジアの文化なのかもしれない。

プール脇で一人だけ準備運動をしている私は、ドイツの人にどう見られているのかはわからない。ヨガをやっていると思われている可能性もあるが、そんなことは気にせず、これからも泳ぐ前には準備運動をしようと思っている。

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