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城の修復と人前で着替える女性たち その2 2010.08.04

その1からの続きです。

他の班は、塔屋の防水工事や、壊れかけた壁や階段の補修などを担当していた。この作業に対し、最初は少し後ろ向きな私だったが、始めてみれば学ぶことは多かったし、現場で一緒に作業をする仲間からもたくさんのことを学ぶことができたので、いまにして思えば貴重な体験をしたと思う。それは2003年と2004年のことだった。そのときの写真を見直してみたら作業の様子が鮮明に蘇って来た。

そして本題の事件が起きたのは、修復を始めて間もない2003年5月17日であった。その日は、講座を一緒に受けている仲間の一人が、午後にケルン大聖堂で結婚式をあげるというので、修復現場に正装を持って行き、適度なところで切上げて、着替えて大聖堂に向かうということになっていた。大聖堂で結婚式といっても、我々は列席せず、式を終えて教会の前に出てきた新郎新婦を一緒に祝福しようという簡単なものだった。

私は着替えを取るため現場小屋に入った。この講座は女性も多く、確か半分くらいを占めていたはずだ。その彼女たちも現場小屋に入ってきて、「さあ着替えるわよ」と言っている。私は彼女たちに配慮して、着替えを持って現場小屋を出ようと入り口に身体を向けてみたら、女性たちはすでに下着になっていたのである。しかも現場小屋は狭いから、着替えている彼女たちを押しのけて外に出るのは無理である。

これは私にとって少なからず衝撃であった。それは、普段から一緒に作業をしている女性数名の下着姿を見てしまったからではない。私を含めて何人かいる男性の前で簡単に下着姿になれることに対してである。動揺する気持ちをどうにか抑えつつ、反対を向いたまま私も着替えた。それまでドイツでいろいろなことを体験していたから、大抵のことには驚かなくなっていたが、目の前で平気で裸に近い状態を視体験するのは実に予想外だった。

ドイツの女性は、洗濯物を見られても気にしないし、サウナだって混浴が基本だから、男性がいても着替え程度なら大した抵抗感もないのだろう。それはドイツだけに限ったことではなく、欧州では一般的なことなのかもしれない。だから、いまにして思えば気にするほどのことではなかったと思う。そしていま、どこかで同じ状況に遭遇したとしても、平気で受け入れられるに違いない。でも、それを嬉しく感じることはないだろう。

世の男性からは、素直に喜べない方がおかしいのではないかという別の意見も聞こえてきそうだが、そういった方には、刺激のより強い男女混浴のサウナを是非体験して欲しいと思うのである。

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