昼間の照明と窓の役割 その1 2010.08.06
建築環境学を学んでいた頃、昼光照明のあり方について、機会あるごとに議論を繰り返していた。太陽光をうまく室内に導き、昼光を照明として利用するということはどういうことなのか、なぜそうした方が良いのか、シミュレーションなども行いながら、その問題点や難しさについても話し合ってきた。そして、電気に頼らず昼光で生活することは、豊かさにもつながるのではないかという話になることが多かったように思う。その考えはいまも変わらない。
だから、実際に街を歩いてみると、太陽が出ている日中に、室内で照明をつけている建物が実に多いことが気にかかる。郊外に建つ戸建住宅や集合住宅では不要だと思うが、人口密度の高い地区などでは隣家との距離も小さいから、昼間に照明を点灯せざるを得ない住居も少なくはないはずだ。でも、まわりに遮るものがない高層の事務所建築でも、日中に照明を点灯させているところがほとんどである。下から見上げると、蛍光灯がついているのが良く見える。
日射を遮るためなのか、あるいは視線防止なのかはわかないが、ブラインドを下げて、そして蛍光灯をつけるということは、外は明るいのに、わざわざ室内を暗くして、人工照明に頼っていることになる。これでは窓としての機能がまったく活かされていない。窓がないのと同じだというのは言い過ぎだが、それに近い状況である。自然光の入らない執務空間はあり得ないけれど、窓があるのに、窓のない環境と似たような状況になっているというのは、やはりおかしい。
日本にいて思うのは、ごくありふれた建築における開口部を含めた外壁の機能が、どうも十分には検討されないまま建ってしまっている気がするのである。いや、多くの設計事務所は住宅でも大型建築でも、ファサードにも相当な気を使っているとは思う。 でもそれは建築の中のほんの一部でしかない。 窓を含めた開口部は、適当な大きさのガラスを嵌め込むだけで解決する問題ではなく、そこにどのような機能を持たせるかまでを考える必要があるはずだ。
その2へ続きます。