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還流独歩

昼間の照明と窓の役割 その2 2010.08.07

その1からの続きです。

直射日光が直接当たる窓側の人は眩し過ぎるし、夏は暑くて、冬は寒い。だから日除けを下ろす。下ろすと暗いから照明をつける。それは仕方のないことなのかもしれない。でも、はたしてそれで良いのだろうかといつも疑問に思う。何十年にも亘って、内側に設けたブラインドにだけ光や温熱環境の調整機能を持たせるだけでは根本的な問題解決にならない。かといって建築的手法を盛り込んで、適切な解決方法を提示している建物はあまりにも少ないと思う。

ではどうすれば良いのだろうか。もちろんその答えは一つではないし、見つけるのも難しいだろう。でもやはり、建築の形態や執務空間のあり方までを追求しなければ、本質的な部分に迫ることができないと私は感じている。その一方で、土地の価格が異常に高い日本では、そのような議論をすること自体が非常に厳しいのが現実だ。土地を有効に使うため、容積は最大限に使い、貸床面積をできるだけ広くすることは、不動産業務に関係する人でなくとも理解できるくらいの常識だろう。

日本の一般的な事務所空間は窓から室奥までの距離が長い。窓側から離れた場所は照明がないと暗い。だから人工照明に頼る。それは内部発熱の増加をもたらすので冷房負荷が増える。だから冷房能力を高めにしつつ、冷房がしっかり効いた空間で執務する。でも周りでは、設定温度を28℃にしましょうと言っている。実際、設定温度が28℃では暑過ぎて集中できないから仕事の効率が落ちる。効率が落ちると残業が増える。一体、何をやっているのだろう。

この実に不思議とも思える悪循環は、おそらくこれからもずっと続いて行くに違いないと私は心の片隅で常に思っている。でもその一方で、もし可能であるならば、これらの問題の本質はどこにあって、それを解決するためにはどうすべきかを、しっかりと議論した上で、建物の熱的性能と光環境に配慮した建築をいつか実現したいと考えている。いますぐにはできないけれど、いつかそんな機会が得られるように少しずつ前に進んで行きたい。

加筆訂正:2010年8月8日(日)/8月9日(月)

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