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還流独歩

出窓 2010.08.25

私がその存在を疑問に思っているもののひとつに「出窓」がある。個人住宅でも使われているが、むしろ、アパートや集合住宅で見かけることが多いように思う。この出窓を見かけると気になって仕方がない。なぜなら、窓を外に張り出させることは、わざわざ熱負荷を取りに行くようなものだからだ。

出窓には夏の強い日射が当たるし、熱も余計に入って来る。ガラス面が壁より外に出ているのだから当たり前だろう。この猛暑を考えればわかるように、暑い外気に飛び出している出窓は太陽熱集熱器のようなものだ。日射を防ぐためにカーテンが必要だが、カーテンをかけても大した効果は望めない。

出窓は普通の窓に比べてガラスの面積が大きいから、冬になると今度は冷たい外気が侵入しやすい。もちろん日射が当たれば少しは太陽の恩恵を受けられるかもしれないが、大抵の窓は単板ガラスだから、結露する可能性が高いし、寒い日はカーテンを閉めることになる。つまり出窓はいつもカーテンを閉めないと使えない開口部なのだ。

とはいえ、出窓は狭い空間を少しでも広く感じられるようにする効果はあるだろう。出窓が日本のどこからやって来たかは知らないが、いつの間にか広く浸透してしまっている背景には、それが大きいかもしれない。あとは普通の窓よりも何となく贅沢に見えるし、花などを飾ったら、お洒落な空間になると一般的に思われている可能性も有りそうだ。

出窓には、そんな期待が寄せられているはずなのだが、実際に出窓のあるお宅を見ると、実情はそうでもない気がするのは私だけだろうか。実際、出窓にカーテンを掛けて、さらにその外側にも簾(すだれ)を下ろしているお宅を見たとき、よぽど暑いのだろうと想像して私は同情してしまった。

室内に入って来る負荷をわざわざ大きくするための出窓をつけるくらいなら、断熱性の高い窓にして、日射もしっかり遮ることのできる外付けの日除けを設ける方が遥かに重要だと私は思う。それはもしかしたら出窓の設置工事よりも高いかもしれない。でもそれは建築の開口部を考える上での本質ではないだろうか。

出窓がある部屋に住んでいる人、出窓が良いと思って自宅に設置した人、出窓の製造に関係している人、出窓のある集合住宅を設計している人や施工にかかわっている人には、極めて失礼な内容なのだが、出窓を見ると、いろいろと考えてしまうのである。

加筆訂正:2011年2月24日(木)/2012年6月23日(土)

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