丸と楕円と四角 その2 2010.08.27
その1からの続きです。
何だか急にラジカセが気になった私は、「パイオニア ラジカセ ランナウェイ」で検索をしてみた。すると、肩にラジカセをかけた少年の後ろ姿を写した絵が目に飛び込んできた。確かに見た記憶がある。「20歳までに、僕はいくつ河を渡るだろうか」「パイオニアポータブルステレオ ランナウェイ」。私の記憶の引出しが一気に開いた。
あまりの懐かしさに、私は暑さを忘れて鳥肌が立った。「パイオニアのラジカセの研究」。こんなサイトをつくってくれている人がいるなんて本当に感激である。涙までは出ないけれど、思わず食い入るように見てしまった。SK-900も真ん中あたりにしっかり載っている。定価は107,000円。私の記憶に間違いはなかった。
それにしても、どのラジカセも実に格好が良い。確かに古さは感じられるけれど、言いようのない味がある。その中でもSK-900のデザインは極めて秀逸で、私はラジカセの最高傑作ではないかとさえ思う。中央に配置されたカセット部分と、横長に配置させた操作部分のまとめ方は実に見事で、私はこの開発者にお礼を言いたいくらいだ。
当時、エアチェックというのが流行っていて、ラジオから流れて来る曲をカセットテープに録音して聞いていた。ラジオ番組を録音して、繰り返し聞いたりもしていた。いまにして思えば、実に地味なことをやっていたものだ。そこで活躍したのがオーディオタイマーである。私はラジカセのデザインと予算に合うもの探した。そしてAKAIのDT-128に行き着いた。
ラジカセの上に置いたタイマーは大きさもデザインも程よくまとまっていて、どちらも私のお気に入りになった。横長の形状をしていて、スイッチ類はすべて四角で統一されている。ほんの一部に丸型が使われてるが、よく見ると丸形の小さなスイッチが、四角い掘り込みの中に納まっている。芸が細かい。金属部分と樹脂部分の配置も均衡も素晴らしい。
大学に入ってからコンパクトディスクプレーヤーを買った。これもAKAIである。音楽媒体がレコードからCDへと変わりつつあったときのCDプレーヤーは実に大きかった。いまでは絶対にデザインできないような化石のような家電製品である。これも検索してみたら「オーディオの足跡」というサイトにしっかり載っていた。私が買ったのはAKAIのCD-A30である。
これもスイッチ類はすべて四角でまとめられている。丸いのはヘッドフォンジャックだけだ。理路整然と並べられた四角いスイッチ類は、一見冷たく見えるし、洗練されているとは言いがたいが、実に良くまとまっていると思う。細かな細工はせずに、堂々と四角だけで勝負しているところが実に清々しく、いま見ても色褪せていないデザインだと思う。
その3へ続きます。