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還流独歩

ビールの祭典まで3km 2010.09.28

8時過ぎ、宿泊先を出て、デュッセルドルフに向かう。二年に一回開かれるグラステックというガラスの専門見本市を視察するためである。ここに来れば、ガラスに関連する最新技術や情報がすべてわかるといっても過言ではないだろう。ガラス関連の会社の方と一緒に見て回るが、私自身も知らないことの方が多いから、通訳する中で勉強になることがたくさんある。お昼は某企業の方から招待を受け、食事をご馳走になる。

午後は午前中に見て回れなかった箇所や、もう一度見たいところを重点的に視察する。シュトゥットガルト工科大学が参画しているところには、最新のガラス技術が展示されていて興味深い。ガラスだけでなく、斬新な日除けのデザインや、太陽熱集熱器を組み込んだファサードなど、外壁に求められる機能をさらに進化させようとする意欲が伝わって来る。日本にも、こういった取組みがないわけではないが、やはりドイツの方が先を行っていることを実感する。

日本人にすると、地味に思えるようなことをドイツの人は地道に進化させている。いま太陽光発電が世界的に注目されており、ドイツの発電量は日本を抜いて世界一になった。その陰で、実は太陽熱を使った給湯や暖房の需要も伸び続けている。日本でも太陽熱利用が叫ばれた時期があったが、いつの間にか「使えない」という認識が広まって下火になった。最近になって太陽熱利用はまた注目を集めているが、その間にドイツは着実に技術力を高めてきた。出遅れる日本。

浮き沈みの激しい日本と、確実に進み続けるドイツ。新しいものに飛びつくけれど長続きしない日本と、物事の本質をついた技術を周りに流されることなく進化させるドイツ。口では環境というけれど本気ではない日本と、これから本当にどうすべきなのかという長期的な視点を大切にするドイツ。建築の技術は世界一だけれど大局的に見るとどの建物も同じな日本と、細かな部分は気にせず基本構想を最後まで貫いて個性的な建築を実現するドイツ。偏見と言われようが私はそう思っている。

夕方、デュッセルドルフを発った飛行機は、ミュンヘン空港に無事到着した。ホテルに入り、市内へ移動すると21時を回っていた。本当は3km先で開催されているオクトーバーフェストに行きたかったのだが、最後の夜ということで、市内の有名なビアホールでの食事となった。23時過ぎ、待っていてくれたバスに乗り、ホテルに戻る。オクトーバーフェストには3回も行っている私は行けなくても構わないのだが、今回は残念な行程になってしまい、申し訳ない気持ちである。

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