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還流独歩

今日から秋休み その2 2010.10.12

構造の人に電話しても、設備の人に連絡しても、その中の誰かが休暇を取っていていないということは良くあったし、それはいまも変わらないはずだ。まわりがそうだから、休むことに対する抵抗は何もない。学校の休みが多いから、子供たちの学力の低下が心配だと言う人は誰もいそうにない。休暇の文化という程のことではないかもしれないが、欧州にはそんな余裕がどこかしらにある。

「日本の人って、有給休暇があるのに、どうして休めないの? 仕事だけして休暇が取れないなんて、生きている意味ないじゃん」。ドイツ人の同僚に言われたことばが空しく消えて行く。休めば良いというものでもないと私は思う。でも、低賃金で長時間労働、雇用の確保、派遣の人の処遇改善、過労死。働く人たちの環境について、各方面で取り沙汰されている日本だけれど、それらは有給休暇の取得という問題以前の話ばかりだ。

ドイツの人たちの休暇を見ていると、日本は一体どこへ向かって進んでいるのだろうかと疑問に思う。ドイツ人並に休みを取るのが良いのかどうかは別としても、両国間の労働環境には、基本的なことも含めて、簡単には埋めることのできないくらいの差があり過ぎる。働いても豊かさが実感できない国と、集中して働き、そしてしっかり休むことができる国の間にある「見えない何かの差」は、実はとても大きいのではないだろうか。

それらは、精神的な豊かさなのか、心のゆとりなのか、何なのかはわからない。わからないけれど、そこには確実に何かの差がある。その差は広がるばかりで追いつけない。ドイツの生活環境は素晴らしく、日本は全然だめだと言うつもりはないけれど、特に働く環境については、ドイツの方が恵まれていることは確かであろう。休暇取得はその中の一つに過ぎない。日本もドイツも豊かな国なのに、豊かさと呼べるものの何かが違う気がしてならないのである。

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