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還流独歩

貼り紙文化 2010.11.02

確か以前、同じようなことを書いた気がするのだが、気のせいかもしれない。何を言いたいかというと、日本には、いたるところに貼り紙がしてあるということだ。地下鉄のホームや電車の中を見回しただで、たくさんある。「危険ですから、ここには立ち止まらないで下さい」「携帯電話は他のお客様にご迷惑となりますから、車内での通話はご遠慮下さい」「開くドアにご注意下さい」。それらは何かを止めるよう注意を喚起するものだ。

それに対して、何がしかの行動を促す貼り紙もある。「ゆずりあってお掛け下さい」「美化にご協力下さい」「手を洗いましょう」など、貼り紙はいたるところで見かける。そのうち書こうと思っていたが、交通安全を呼びかける標語も数えきれないくらいある。例を挙げるのも恥ずかしくなるような「飛び出し注意」とか「横断歩道を渡りましょう」という看板が電柱に立てかけられているのを見ると、もはや病的な感じさえ受ける。

そういえば、いつも行く八丁堀のコインランドリーの壁一面が、貼り紙で埋め尽くされているのを思い出した。たくさんあり過ぎて、めまいがする。一方、ケルンのヴァッシュザローン(コインランドリー)には貼り紙は一枚もない。洗濯機と乾燥機の使い方を示した大きな掲示板が壁にかかっているだけである。通りにも街の中にも、貼り紙や立て看板はほとんどない。だいたい、立て看板を掛けられるような電柱がない。

私は韓国にも中国にも行ったことがないので、確信はまったくないのだが、貼り紙とか看板とかは、きっとアジアの文化なのかもしれないと思う。それが悪いことかどうかはわからないが、日本中にある貼り紙とか看板を全部なくしたら、少しはすっきりするかもしれないと思いながら、東京の街を歩くのであった。

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