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還流独歩

買い物かご その2 2010.11.11

話は少し飛躍するが、ドイツの自動車会社は女性向けの車はつくっていない。車は男性も女性も運転するものだからだ。一方、日本には女性向けの車があったりする。それらは必ずしも丸くはないし、デザイン的にも悪くはないのだろうとは思う。車をたくさん売るためには女性を囲い込まないといけないことだって理解できる。でもドイツではそんな車はつくらない。BMWやメルセデスは、女性が運転したって格好良く見えるようにできているからだ。

ドイツの家電製品は、洗濯機や冷蔵庫、掃除機といった女性が使う頻度が比較的高いものであっても、日本のように女性に媚びるようなデザインのものはないと私は思う。ドイツ製品を宣伝するつもりはないけれど、家電製品といえども、そこには一つの完成された工業製品であるという意識が根底にあるから、飽きがくるような中途半端なデザインなどあり得ない。以前はドイツの堅いデザインが野暮ったく見えたこともあったが、いまは違う。

その中で典型的なのが洗濯機だろう。ドイツの洗濯機は相変わらず四角いままだ。Miele、AEG、Siemens、Boschなど、いずれも四角い形を崩そうとしない。もっとも、ボタン類が若干丸くなって来てはいるのが私は気になるが、基本的に丸いのは、洗濯物を出し入れする扉だけである。ドイツでは、洗濯機を流しの下に設置することも多いから、その形を変えたくても変えられないのだとは思うけれど、これから先も丸くなりそうな気配はない。

私はそういったことに携わるデザイナーではないが、いま書いたようなことは私なりのこだわりなのだ。それを人に押し付けるつもりはないけれど、何気ないもののデザインついて考えることは、いろいろなものの本質を見極めることにつながるのではないかと思うし、とても大切な視点のような気がするのである。そんなことを考えながら、日本のあらゆるものを見直すのは失礼だけれど、気になるものは仕方ないのである。

おまけの話だが、ドイツには洋式便座まで四角いものがある。実際に座ってみて感じるのは、こればかりはやはり丸が良いと思うのであった。

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