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還流独歩

手描きとCAD その1 2010.11.17

最近はCADで図面を描くことが大半だ。もちろん最初は手書きのスケッチから始まるが、大抵の場合、すぐにCADで図面を起こすことになる。それでも中には手で描くことにこだわっている事務所もあるし、設計競技などでは部分的に手書きの図面を使うことも珍しくはない。

誰もが感じているように、CADの普及は設計に大きな変化をもたらした。もはやCADのない設計はできないとまで言って良いと思う。年寄り臭いことを言うが、ほんの20年くらい前までは、大規模な計画以外、コンピュータを使って画面上で図面を描くこともほとんどなかった。

いまにして思うと、手書きでも設計は何も問題なくできていた。トレーシングペーパーに描いた原図を印刷する場合、白紙だと高いので、大抵の場合は青焼き図面にして部数を増やした。アンモニア臭が懐かしい。構造や設備の人に渡す原図は、原図をトレーシングペーパーにコピーして、それを渡して作図してもらっていたと思う。

いまや個人の住宅から再開発のような大きな物件まで、すべてがCADになり、コンピュータがないと図面が描けなくなった。でも最終的な成果物のほとんが、いまだに紙媒体である。BIMのような三次元になると、もはや紙に印刷することが無意味に感じられるが、それでもほとんどの場合が「紙」への出力を基本としているだろう。

不思議なもので、図面の確認や訂正といった作業は、どうしても紙に出力して行ってしまう。A3版くらいならまだしも、A2とかA1版の図面を画面上で確認するのは無理というものだ。あたり前のことだが、すべてを出力した方が見やすいし、明らかに間違いを発見できる。紙媒体というのは実に優れている。

それからいつも思うのだが、CADになってから紙の消費量が確実に増えたはずだ。それはCADだけのせいではなく、コンピュータの普及と関係しているに違いない。文字を書くにしても表計算にしても、紙媒体での出力を求められるとき、僅かな間違いでも印刷し直さないと正しい書類にならない。

手書きが中心だった頃は、間違ったところを消して書き直せば原本の訂正は済んだが、磁気媒体を使って文章を書いたり、図面を作成していると、正解はPCの中にしかないから、磁気媒体のやり取り以外に、印刷の工程が入ると話は違って来る。しかもCADになってからは、僅かな訂正をするたびに印刷を繰り返してしまう嫌いがある。

もちろん紙を主体とした場合でも、間違いがあれば副本もすべて印刷し直さないといけない。ただ、手を使って書き直せば済むところを、磁気媒体の場合は紙そのものを差し替える必要がある。つまり、磁気を使った情報のやり取りに紙媒体が介入して来るから、紙の消費量は増えることになるのだと思う。

加筆訂正:2010年12月17日(金)

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