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還流独歩

建築見本市BAU その4 2011.01.23

木造建築の話を続けると、木の良さが見直されているだけでなく、外装にも木を使った事例は確実に増えているようだ。木は変色するが、それを敢えて承知の上で使うことが多い。雨に当たって色落ちすると灰色になることが多いが、ある住宅団地を訪れた際、「灰色ではなく、銀色と言うべきだ」と指摘された。確かにその通りである。

外壁に木を使うと、その裏側の防水処理が問題となるが、某企業はそれを見越して、紫外線にも強い透湿性防水シートを開発している。ドイツでも建物の内外における湿度の問題が顕著になって来ているから、耐候性にすぐれ、しかも水を通さず、湿気だけを透過させる外壁側の素材というのは注目される可能性が高いだろう。

話を断熱に戻すと、ドイツは暖房が主流であるから、失礼な言い方になってしまうが、断熱材を厚くするというのは、一方向的な進化といえる。そして外壁の断熱性能を高めると同様に重要なのが窓である。EnEV/エネフと呼ばれる省エネルギー政策の段階的強化に順じ、いまは複層ガラスから三層ガラスのアルゴンガス入りが一般的になってきている。

窓を制作する企業は、どこもほぼ三層ガラスしか展示していない。窓以外の部位はそれに準じてはいないものの、主要な開口部は、もはや三層以外はあり得ないという流れになっている。熱貫流率が0.8W/m*mKといった数値を掲げ、窓の断熱性能が進化を遂げいてることを主張する展示も目立ったのが印象的であった。

話は逸れるが、それにしてもいつも思うのは、多くの企業がビールと軽食を提供していることである。もはや打合せというというより、そのためだけに来ていると思われる人で熱気に溢れているところが目につく。私はその恩恵に預かることはないのだが、見本市が居酒屋状態になっているのを見ると、こちらも楽しくなる。

他にも書きたいことがあるが、一旦、このあたりで終わらせておこうと思う。今回は二日間の視察であったが、細かなことは抜きにして、その雰囲気と熱気を感じられたことは大きかったように思う。また、日本の某企業とドイツ企業との打合せにも半日程、通訳として同席させて頂く貴重な機会を得た。

私はドイツの建築が最先端だとは思っていないし、その技術も日本の気候や風土にはたして合致するのかどうか、いつも自問自答を繰り返してはいるが、彼らの本質を突く姿勢や努力は見習うべきことが多いように思う。日本の建築技術は世界にひけを取らないけれど、根本的なところでの新たな変革が求められている気もするのである。

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