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還流独歩

契約形態と社会構造 その2 2011.04.08

その間には、設計事務所が関わることも多いが、建築主に見積を直接出し、直に受注できる意義は非常に大きい。そして、技術の進歩と価格の競争の二つが噛み合う会社は成長し続け、それができないところは淘汰されて行く。大手の建設会社の顔色を伺いながら営業し、次の仕事のために赤字覚悟で受注することを強いられる日本と、建築主に対して交渉権を持つことができるドイツの違いはあまりにも大きい。

建築主から工事金額を受け取る各工事会社の間には上下関係が存在しない。規模が大きくなれば、工事全体をまとめる建設会社も必要になってくることもあるが、契約が建築主と一対一である限りは、どの会社も横並びの関係となる。協力会社というのは、実は上下関係を意味するのではなく、パートナーということばが示すように、本来なら横並びでなければならないのだと思う。その相手が一つではなく、複数が対等に入り込む社会は大人と言えるのかもしれない。

日本の社会が成熟していないとは思わないが、その視点で社会を見つめると、どうも疑問符が付いてしまうように感じられる。それに対し、一対一、あるいは一対一対一対一という対等な関係がどのようなものかを簡単に表現するならば、互いに気持が良く仕事ができるということかもしれないと思う。それを日本ができていないとは言わない。日本には長い年月の間に培われて来た良いところもある。繊細さ、寛容、忍耐ということばが相応しいかわからないけれど、そんな面があることも確かだ。

そう思いつつも、契約というものは、そもそも一対一でありながら、それが縦方向に連なるのと、平行して横に広がるのでは、大きな違いがあるように思われる。もちろん、縦方向にもそれなりの良さがあるだろうし、横方向のつながりにも問題点は数多くあるはずだ。でも、日本とドイツを比較して、何が違うかを大きな視点で見たときに、契約形態というものが、社会構造をつくり上げる中での極めて大きな部分を占めているのではないかと思うのである。

加筆訂正:2011年4月19日(火)

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