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還流独歩

花粉と春が全開中 2011.04.21

ここ数日、机の周りがどうも埃っぽいと思ったら、春の風に乗って飛んで来た花粉だった。手で少し拭くと指が黄色になる。汚いわけではないが、部屋中の床や棚、台所周りにも花粉が積もっているので、掃除機をかけたり、拭き掃除をする。窓ガラスにも、小さな花粉がたくさんついているのが見える。

今週に入って、ドイツは好天の日が続くようになり、ケルンの最高気温は25℃前後まで上がっている。春を通り越して初夏の陽気だ。快晴の気持が良い日には、窓を開け放って春の風をたくさん取り込みたい。花粉が入って来ることを気にするなど、この季節と自然に対して失礼であろう。

夕べは、近くに住む友人を訪ね、地下室を見せてもらった。来月に掲載される某コラム用の写真を撮るためである。1939年に建てられた集合住宅の地下室は、いろいろな歴史を携えていて面白い。戦争に備えてか鉄製の扉もそのまま遺されている。おそらく有毒ガスから身を守るための設備のようだ。

そのあと一緒に軽く食事に出た。歩いて5分くらいの広場に、カフェやレストランなどがいくつか並んでいるが、外に並べられたテーブルは、どこも春の陽気を満喫する人で溢れている。偶然にも、一つだけ空いているところがあった。給仕してくれる女性も忙しそうに各テーブルを回っている。

日が暮れ始めて、空が深い青色に変わると、照明とろうそくが灯された。先程まではTシャツでも十分かと思うくらい暖かかったが、急に涼しくなってきたので上着を着る。身体を内側から温めてくれる赤の葡萄酒が何だか心に深く染み込んで行く。

有難いという気持と、何とも言えない複雑な心境が重なりながら、春の夜が更けて行った。

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