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還流独歩

豊かな日曜日 2011.04.24

朝9時前、いつものように街の中心部にあるアグリッパバードへ泳ぎに行く。平日は6時半から開いているが、週末は9時からの営業である。Tシャツの上に一枚、上着を着ていったが、朝から強い陽射しを受けながら15分くらい歩いたら汗ばんできた。プールの入口の前には入館を待つ人がすでに20人くらいいる。晴天に恵まれた復活祭の日曜だというのに、どこにも出かけず、朝から泳ぎに来たり、併設されているフィットネスジムに行く人も多いようだ。

復活祭の日曜の11時前、通りに面して百軒以上も連なる商店街で開いているのは、カフェが一軒と、アイスクリームを売っているお店だけだ。今日も晴れて暑くなりそうだから、きっと売上も伸びるだろう。すでに山盛りのアイスクリームが用意されている。その先にある数年前にできたビアホールは開店の準備を始めているところだ。飲食店は開いているが、それ以外の商業店舗はすべて閉店である。閉店法という法律があるのだから仕方がない。

でも、お店が開いていなくても、なぜだか豊かさを感じる。開いていない豊かさという表現は的を得ていないかもしれないが、齷齪(あくせく)しない日曜というものが、ドイツではいまでもとても大切にされている気がするのである。日曜に買物ができないのは確かに不便だ。でも慣れてしまうと何の問題もない。その一方で、日本が豊かではないと言うつもりもない。ただ、自由に買物ができないという実に不都合なことが、実は不思議な余裕を生み出してる気がするのである。

豊かさとは、便利さとか、所有するものの数で計れるものではないと私は思う。それはあくまで私の意見だから、正しいかどうかはわからないし、人の価値観によっても大きく異なるので、それを押し付けるつもりなど毛頭ない。日曜に買物ができないなら単に他の日に済ませれば良い。外に出かけても、飲食店以外、開いていないというのは、寂しい気もするけれども、その分、何もしないゆったりとした時間を楽しもう。静かな通りに、鳥のさえずりが響く。

ドイツに来ると、いつもそんな豊かさを感じてしまうのである。

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