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還流独歩

野鳥のお食事 2011.05.14

冷蔵庫に入れたままにしていたリンゴが少し元気がなくなって来たので、半分に割ってバルコニーに置いてみた。鳥をおびき寄せて観察をするためである。しばらくしたら、身体が黒で、くちばしが黄色い鳥がやって来た。近くの公園で良く見かける鳥だ。体長は20cmくらいだろうか。元気よくつつくので、リンゴが右に左に動き回るが、それを気にすることもなく懸命に食べている。

作業をしながら鳥を観察するのは実に面白い。リンゴを置くとまず偵察に来る。食べられるものかどうかを確かめるようだ。しかも周囲を見渡して、その場が安全かどうかにも注意を払うらしい。そしてその場を一度離れ、少ししてからもう一度やって来て、ようやく食べ始めるのだが、ついばんでいるときも常に周りを確認している。鳥が持つ特有の機敏な動きにも感心してしまう。

一通り食べ終わったあとは、必ずくちばしを柵に擦り付けて掃除する。人間が歯を磨くのと同じだろうか。そして食べ終わった満足感なのか、あるいは餌を独り占めにできたことを自慢するのかわからないが、尾羽を動かして身体の均衡を保ちつつ、空を見上げたりする。しかも飛び立つ前に身体を振るわせながら少し羽根を膨らませたと思ったら、ぷりっと糞を排出。鳥は身体を常に軽く保つ必要があるから仕方あるまい。

そして30分くらいしたら、またやって来て、同じことを繰り返す。次第に慣れて来たのか、開け放した窓から私の姿が見えても気にならなくなったらしい。仕舞には、私がバルコニーに出ていても、リンゴを求めて1mくらい先までやって来るようにまでなった。時折、視線が合うと一瞬、微動だにしないまま固まる姿が笑えたりする。そして食べ尽くしたリンゴが小さくなると、くわえてどこかに持って行ってしまう。

噂を聞きつけて来たのか、他にも身体が灰色の鳥や、鳩、カラスやカササギまでが偵察に現れ始めた。でも大きな鳥はバルコニーの中にまで入るのは危険だと思っているようで、来るのは相変わらずくちばしが黄色い鳥と、灰色の鳥だけである。時折、リンゴを巡る争いも見られる。一羽がついばむのを間近に見ながら首を傾げたりする姿を見ると人間の行動と重なる面がある。

それにしても鳥は餌を探して、どこからともなく、あちこちをよく見ているようだ。リンゴがなくても、何かあるのではないかと下調べに来たりもする。何もないと知らない素振りを見せて去って行く。昔は鳥の行動などには、それほど興味もなかったけれど、こうして間近で観察してみるとかなり興味深い。バルコニーは鳥の糞が目立ち始めたけれど、気にする程のことでもない。もう少し楽しませてもらおう。

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