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ハンブルク移動記 その1 2011.05.15

早朝にハンブルクへ移動する。今回は往復とも電車である。片道だけで4時間近くかかるが、空港までの移動や待ち時間を考慮すると、飛行機を使っても所要時間はおそらく同じくらいだろう。しかも日曜ということもあって、ケルンからハンブルク空港へ向かう便は、午前には一本もなく、夕方前に3便があるだけだ。今日は移動日だから早めに着いて、エルベ川の再開発なども見に行きたいので、電車で移動することにした。

ケルン中央駅を8時10分に出発するInterCity2220に乗る。駅の掲示板には知らない行き先が出ている。もしかしたらデンマークまで行く電車なのかもしれない。ホームには電車を待つ人がそれなりにいるが、到着した電車には、ほとんど人が乗っていなかった。始発はフランクフルト駅で、終着はやはりデンマークだった。テーブルに置いてある時刻表にはFehmarn-Burgと出ている。一体どこなのだろうか。

4人掛けのテーブルで作業を始める。通路を挟んだ反対側にはネクタイをした男性が資料に目を通している。日曜だというのに仕事なのだろうか。私の席の上には、ドルトムントから終着駅まで予約が入っていることを示す表示が出ている。途中まで使わせてもらおう。ケルンを出てからすぐにICEが並走し始めた。ずっと同じ速度で走るので向こうの電車に乗っている人と目が合ったりする。こちらがうなずくと向こうもうなずき返して来る。

いずれ線路が一つになって衝突するのではないかと思ったが、10分程したら、並走していたICEは急に左の方へ逸れて行って、それきり見えなくなった。向こうはデュッセルドルフの方へ、こちらはゾーリンゲンを抜けてウッパータルへ向かっている。日曜の少し早い時間ということもあってか車内は静かである。車内販売の女性が、トレイにコーヒーを乗せて通り過ぎる。外は曇り空で気温も低めだ。イースターの陽気はどこかへ行ってしまった。

ハンブルクまで電車で移動するのは5年振りくらいだろうか。長距離の移動の場合,最近は飛行機かレンタカーを使うことが多いが、乗換なしで揺られて行く電車も決して悪くはない。実際、こうして文章も打てるし、木曜日が締切の原稿の手直しだってできる。溜っている写真の整理をするのにも好都合だ。流れる景色を見ながら、いろいろな考え事をする時間は大切である。1時間程して、電車がハーゲン駅に着くと雨が降り始めた。

先程、車内アナウンスがあり、技術的な問題があるため運行が遅れるという。どんな問題かは知らないが、電車は中途半端な速度で走っていて、すでに10分の遅れが出ている。だいたいそんなものだろう。急ぐ旅ではないから、今日は1時間くらいの遅延でも気にならないくらいだ。ハーゲン駅では夫婦が一組み乗って来て、予約していたとなりのテーブルの窓側に座った。先程までいた男性はいつの間にかどこかに移動したようだ。

ドルトムントに近づくと晴れ間が見えて来た。出発する前に今日の天気を確認したら、雲と雷の絵の脇から太陽が少しだけ顔を出した絵が出ていた。おそらく晴れと雨と雷が、目まぐるしくやって来るということなのだろう。隣りの席には陽射しが入り始めたと思ったら、太陽はまたすぐ雲に隠れてしまった。ドルトムントのホームにはたくさんの人が電車を待っていたが、私が乗っている先頭車両が着いたところの外には誰もいない。

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