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数詞と名詞 2011.06.11

先日、日付の書き方について書いた。今日は複数個のものが欲しいときの表現についてである。例えば日本では、50円切手を5枚買うときには、「50円切手を5枚下さい」と言う。でも、ドイツでは個数を先に言う。うまく日本語に訳せないが、「5枚、切手、50セント」という順番になる。その例を挙げると「Fünf Briefmarken zu 50 Cent」だろう。つまり、切手の額は最後に来る。無論、言い方は千差万別だから、これが完全に正しいわけではない。

ところで、夕方、郵便局に切手を買いに行ったら、いつものように長蛇の列ができていたので、自動券売機で購入することにした。ドイツの切手券売機は、札は使えないし、しかもおつりが出ないという化石のような機能しか持っていないくせに、なぜか切手の額については自分で自由に決められるようになっている。あまり意味がないと思いつつ使っているのだが、中途半端な83セントとか、7セントだって選択することが可能なのである。

もっとも、基本画面には、はがき用の45セントや、封書用の55セントがすぐに選択できるようになっているが、上述のように、好きな額の切手も販売してくれる。話が逸れたが、今回は欧州内に出すための切手ではなく、日本へ送るはがき用の75セント切手を6枚買った。そのときの画面には「6×0.75EUR」と表示される。つまり枚数が先なのだ。日本であれば「75円×6枚」となるのだが、まったくもって正反対なのである。

最初に数詞がきて、そのあとにそれを受ける名詞が来るという言語体系なのだから、当然だとはいえ、ことばの違いというものを実感させられる。前にも書いたが、「日本人とドイツ人は似ていますよね」と訊かれることがたまにある。比較的、時間に正確だとか、約束は守るとか、そんな共通点はあるけれども、「似ているか似ていないか」と二択で訊かれたら、「明らかに似ていない」と私は答えているし、実際にそう思っている。

話すことばが違っていて、しかも、ものの数という生活に極めて重要な表現方法も正反対なのだから、考え方や思考回路が違ってあたり前だろう。ただ付け加えれば、その人の性格や人間性といったことについては、国を越えて共通する面があるとは思う。でも、どのように考えるかということになると、やはり考え方は明らかに違っていると、自動販売機で切手を買うときに、いつもそんなことを思うのである。

そしていまさらながら、「リンゴ5個」は英語で「five apples」であり、ドイツ語だと「fünf Äpfel」となって、日本語とは名詞と数詞の並びがまったく逆であることに、改めて感心してしまったりするのである。

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