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還流独歩

言語変換 2011.06.19

一昨日のことだが、デュッセルドルフにある某企業での打合せに通訳として同行した。この会社には、ちょうど2か月程前にも訪問をしている。今日は、前回の打合せの続きだ。議題に入る前に、コーヒーか紅茶など、飲み物を訊いてくるのはドイツ流である。先方の担当の方は、非常に気さくな方で、今日の訪問についても電話でやりとりをしているから、こちらも気分的に楽ではある。

打合せの内容については事前に資料を頂き、また口頭でも確認してあるが、今日は非常に重要な交渉になるため、どのように進めるかを頭の中で整理しておく必要がある。ただ、遠回しな訊き方をするほどのことではないし、むしろそれは避けた方が良いので、質問の優先順位なども含めて打合せに望んだ。こういう席に着くと、いつも思うのだが、ドイツの人の思考回路は気持が良いくらい単刀直入だ。

だからといって、日本の人が決してそうではないとは言い切れない。的確な経営判断を下さなければならないような人は、同じような考え方ということもあるだろうし、そうでなければ会社を運営できないはずだ。ただドイツの人は、判断の権限が、かなり個人に任されていることが多いように感じられる。だから、現場での決定事項がそのまま会社の上層部に伝えられ、それで問題は解決する。

一方、日本は、情報や懸案事項が企業の上層部へ報告され、そこでの判断が現場担当の方に戻って来るまで、意外と時間がかかるし、決まりかけていたことが、その経路を辿るうちに、さらに違う検討項目が付加されて返って来ることも多いのではないだろうか。これはあくまでも私見でしかないから、別の意見もあるだろうし、すべての場合に当てはまるとも思ってはいない。

それにしても、今回の打合せでは久しぶりに頭を使った。頭の中の言語変換用の演算処理装置が全開で動いているのを感じてしまう。そう言うとやや大袈裟だが、担当の方は英語も堪能なので、ドイツ語と英語を入れ混ぜた打合せになるからなおさらだ。英語は理解できても、英語では返せないので、英語を理解しつつ、ドイツ語で返答するという状況に陥ってしまう。多少なりとも慣れているとはいえ、難しいものである。

それでも2時間近い打合せは無事に終わった。ただ毎回思うのは、不完全燃焼な感じは否めない。企業間の交渉を伴う通訳には、個人的な意見を挟む余地はないし、そうすべきではないのだが、どのように伝えるべきかを考えながら、言語変換するのというのは、たやすいことではない。まだまだドイツ語の勉強が足りないことを実感し、自己嫌悪に陥ったりもする。新聞を読んだり、語彙力も高めたい。そう思う。

木曜は早朝からフランクフルトに出かけ、金曜は半日とはいえ、午前の打合せに同行したので、帰りの電車の中では強烈な眠気が襲って来たが、何とか持ちこたえた。今回も貴重な機会を頂き、非常に勉強をさせてもらったし、またこれに満足せず、少しでも邁進して行きたいと思う。

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