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還流独歩

夏の北海道で考える 2011.07.29

昨日の夕方の便で羽田から札幌に向かう。一足早いお盆休みというほどのことではないが、いろいろと気にかかっていることもあるし、東京での作業が慌ただしくなって来ると、飛行機でわずか90分の国内移動とはいえ、その時間が取りづらくなるものなので、この時期に思い切って帰省することにした。

いつも使う飛行機は、今日は始発から15時までの便が、すべて満席で、夕方の便には少し空きがあるものの、それ以降もかなり混んでいるようだ。夏の時期だから北海道へ行く人が多いとは思うが、福岡のように新幹線という代替輸送があるわけではないから、飛行機に頼らざるを得ないことは確かだろう。

今年の北海道は意外と暑いらしい。といっても東京のような酷暑になるはずもなく、北海道の人の暑さに対する感覚が内地(本州)の人と大きく違うのは大袈裟に聞こえるが、商業施設や事務所ビル以外の普通の家庭には、冷房設備などないから、家の中は意外と暑くなる。頼るのは扇風機と団扇だけだ。

千歳空港に着いたのは20時前だった。外に出ると、東京よりも遥かに涼しいものの、何となく湿度が高い気がする。半袖にはちょうど心地良く感じられるが、札幌市内に向かうバスに乗ったら冷房のない車内は妙に暑く、出発まで座っている間に額から汗が出て来てしまった。狭い車内には熱気がこもっているのだ。

今日は、親戚が札幌市内にマンションを購入したというので、お祝いを兼ねて訪れる。中心部の大通りまでわずか3駅という好立地に建つ新築の集合住宅である。最初に内部を見せてもらう。竣工してから半年くらいだし、奇麗だから批評のしようもない。他の集合住宅との差別化をはかるための、いろいろな工夫も伺える。野暮な指摘はやめよう。

12階建ての6階の角部屋だから、方角が正反対の窓を開けて家の中を風の道をつくると、心地良い夏の夜風が廊下を通り抜けて行く。ただ、やはり風がない部屋は暑く感じる。天井も高くはないし、何となくだが熱の逃げ場がないような気がするのである。ここ数年、札幌での冷房の普及率が上がっているらしいが、それもわかる気がする。

本来、北海道というのは、もともと冷房など不要な地域である。もちろん年によっては最高気温が35℃くらいになるときもあるし、連日、30℃を超える日が続くこともあるが、空気は乾いていて、夏は扇風機だけで十分にしのげるはずなのだ。しかし、今年の夏は湿度が少し高い気がするし、もしかしたら本州からの湿気の影響を受けているのかもしれない。

札幌や東北地方の北部地域での冷房設備の普及が伸びつつあることは、札幌市立大学で教鞭を取る後輩の鋭い指摘だが、それには微気候や都市空間の変化が関係しているだけでなく、建築にもその責任はあるのではないかという。ここれで何度も書いたが、その分野にかかわる一人として、無関心ではいられない大切なことだと思う。

日本の建築、特に最近の住宅において何が悪いと決めつけるのは甚だ失礼だが、今回、新しい集合住宅にお邪魔したことがきっかけで、以前から気になっていることが頭の中で少しまとまりつつあるので、それについては次回に触れたいと思う。相変わらず、話の流れが散漫になってしまったが、お許し頂ければ幸いである。

加筆訂正:2011年12月4日(日)

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