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還流独歩

日土小学校への旅 その1 2011.08.08

昨日、日曜から二泊三日の予定で、母校の建築学科が主催する卒業生を対象とした夏の建築研修旅行に参加している。週末の早朝5時前に羽田空港へ向けて出発する。二日とも、宿泊先で朝食を食べる時間がない超強行な行程である。7時半前の松山空港行きに搭乗し、到着後、貸切バスで八幡浜市へ向かう。

初日の今日は、数年前から是非とも訪れてみたいと思っていた「日土(ひづち)小学校」の視察が中心だ。二日目は瀬戸内海に浮かぶ「犬島/いぬじま」と「豊島/てしま」に行き、最終日の三日目は「直島/なおしま」での美術館巡りが待っている。最後は高松で、イサム・ノグチ庭園美術館に立寄り、高松空港から東京に戻る行程である。

1960年に「文藝春秋」が「建築家ベスト10」という特集において、日本を代表する建築家の一人に選出されたされた松村正恒(まつむらまさつね)が最初に手がけた学校建築が川之内小学校だと言われている。竣工は1950年6月だから、築61年になる。還暦を過ぎた木造校舎は山あいの集落の中にいまも建っていた。

「明るいあいさつ楽しい一日」と書かれた正面中央の小さい入口から中に入ると、天井が一気に高くなり、そこが校舎の裏側にある開放廊下につながっている。この学校の廊下は半分は外なのだ。そして北側には崖が迫っているというのに、この土間廊下が実に明るい。上部の横連窓から入った光が教室にも届く配慮が垣間見える。

夏休みだから教室までは見ることができなかったが、この素朴な半外部廊下だけでも実に見応えがあるし、木造校舎の趣を感じる空間でもある。現在、児童数は6名だと聞いたが、こういった学校がいつまでも残って欲しいと思うのは、保存の難しさと現状を知ることもなく、わずか30分ほどの滞在だけで立ち去ってしまう私の身勝手な意見だろうか。

対向車が来るたびに急制動をかけながら細い道を進むバスは、昼前に日土小学校の校庭にゆっくりと入った。そこに広がる淡い緑色の校舎は、二階の廊下の窓が一つおきに開け放たれており、歩く人たちの動きが手に取るようにわかる。ガラスを多用してはいるものの、ガラス建築とは違う。でも不思議な透明感を持っている。

第一印象は月並みな表現で恐縮だが、「格好良い」であった。もはや難しい形容など要らない。改修を終えたばかりとはいえ、実に見栄えのする建築だと思う。だからといって、その存在が、ことさらに誇示されているわけではない。風土にしっかりと根付いたおおらかな建物でありながら、細部には相当な細やかさも見受けられる。

加筆訂正:2011年9月14日(水)

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