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還流独歩

塀の文化 2011.09.29

学生となって東京に出てきたときに、郷里の北海道とはかけ離れた環境の違いを感じたことはいくつもある。その一つが視線よりも高い塀の存在だった。最近、開発された新しい住宅地などでは、塀というのがあまり見られない気もするが、伝統的な住宅や大きな庭がある家は、立派な塀に囲まれていることが少なくない。

一方、北海道の住まいには塀がないと言い切っても良いだろう。中には庭や家が見えないくらいの高い門扉と塀を張り巡らしている家もあるが、その数は極めて少ない。仮に塀をつくるとしても、腰の高さくらいがほとんどではないだろうか。その理由は、開放的な環境も関係しているとは思うが、積雪時の問題も大きいからではないかと思う。

別に塀のことが嫌いなわけではない。それがあるお陰で、外部から干渉されない私的な空間が生まれ、住まいの中に落ち着いた環境をつくり出すことができるし、植栽を充実させれば微気候が生まれたりもする。そう考えると、塀というのは排他的に見えつつも、住まいを守る役割を担っているのだろう。

その点、家の間に何もない北海道の環境を見ると、何だか清々しくも感じる。もちろん、それには敷地の広さも関係しているとは思うが、わざわざお金をかけて、雪が溜りやすい場所をつくることもなかろう。しっかりとした基礎をつくらないと凍結の影響を受けて倒壊することも十分に考えられる。

住まいの環境に与える塀というのは実に不思議な存在だ。北海道と東京を行き来すると、いつもそんなことを感じてしまうのである。

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