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還流独歩

洗濯機置き場 2011.10.01

一昨日、東京に出て来たときのことを想い出して、敷地境界にある塀について書いた。今日は洗濯機の置き場を考察してみたい。いまでは少なくなったかもしれないが、少し古いアパートなどでは、洗濯機を外に置いているのを見かけることがある。一階であれば玄関の脇やバルコニーなどが多いだろうか。あるいは二階だと、外部廊下に剥き出しで置かれている場合もあるかもしれない。昔々、お婆さんは川で洗濯ならぬ、外で洗濯である。

屋外に置かれている洗濯機を最初に見たときは素直に驚いた。それは北海道で見かけることのない高い塀のあるお屋敷とは比較にならないくらいの新鮮な光景だった。そして、こう思った「洗濯機が外にあったらシバレるだろ」。そもそも、雪が積もりそうなところで洗濯することなどあり得ないし、気温が氷点下となる日が続けば洗濯機が壊れてしまう。雪は降らなくても雨は当るだろうし、埃も飛んで来るところに洗濯機がある理由を私はいまだに見つけられない。

その当時、ある友人宅に行ったら、埃にまみれて汚くなった洗濯機が外に置いてあった。隣りの人はカバーをかけていたが、その友人は何もしていない。ただ、あたり前のことだが、蓋はいつも閉めているから中は奇麗である。外側の汚れが洗濯物に付くことはないにしても、何だか気持が悪いと感じるのは変だろうか。これは生理的な問題だと思うので、おそらく平気な人もいるのかもしれない。

なぜ、洗濯機が屋外にあるのだろうか。部屋が狭いからという理由もあり得なくはない。かといって、流し台のない家はないから、排水設備の問題ということでもなさそうだ。洗濯機の排水は、壁を横に抜く壁排水ではなく、床排水にしなければならないから、施工的な問題は少なからずありそうだが、お手洗いの排水だって同じことである。古いアパートが建てられたときには、洗濯機がなかったのか。いや、それもあり得ないだろう。

学生のときに住んでいたアパートには、小さな玄関の片隅に排水口があった。だから室内に洗濯機を置くことができた。確か部屋を借りるときに不動産会社の人に、そんな要望を出した記憶がある。いまにして思えば、洗濯機を外に置くことに対して私なりに相当な抵抗感があったのだと思う。いまでも洗濯機を外に置かざるを得ない部屋に住んでいる人には失礼だが、洗濯は家の中でするものではないかと問いかけてみたい。

一点だけ補足するとすれば、洗濯物が外で干せるようなところに洗濯機があると便利だという見方は許される気もするので、千歩譲って、それも許容範囲に含めておこう。そんな環境にいる方には申し訳ないが、東京のどこかで、いまも外に置かれている洗濯機を探してみようかと密かに思っている。

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