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還流独歩

外断熱工事 その1 2011.10.05

早朝水泳を終えて、8時過ぎに近く飲食店舗を通ると、外壁に断熱材を貼付ける工事をしていた。淡い桜色をした薄いフェノール樹脂系のもので、外壁の厚さを抑える必要がある場所によく使われている。こういう現場に遭遇すると、できるだけ写真を撮って、現場で作業している人に話を訊くようにしている。情報は磁気媒体の中にだけあるわけでない。ただ、話しかけるのには、かなり勇気が必要だったりするときもある。

少し小柄で恰幅の良い年配の男性と、若者が二人いて、彼らは端部の補強を行なっている。写真を撮って良いかと訊くと快諾してくれた。まさにお父さんと呼んでも差し支えないくらいのその男性に質問すると、勝手に喋り始めた。こちらの質問に対して、いくつも答えて来るのだ。外見は無愛想に見えても、説明好きのドイツ人は実に多い。「ここはこの間までタイルを貼ってあったんだが、今回、断熱材を施して、あとは塗り壁にするんだ」。

聞くところによると、今回の工事は一階の店舗部分だけで、二階から上は、どうやら断熱改修を終えているようだ。フェノール樹脂系の断熱材は、一般に使われているEPSと比較すると、同じ厚さで断熱性能が約二倍ほどある。ドイツの断熱改修では、大抵の場合で120mmから150mm近い断熱材を施すので、いままで以上に壁が厚くなる。現場監督と思われるお父さんは「厚過ぎるよね」と言う。ここで使われているのは30mmくらいだろうか。実に薄い。

「昔は断熱なんかなかったから、陽射しが当れば、それが室内への方へ伝導して、少しは暖かくなったはずだけれど、いまは室内は冷たいままだ」とお父さんは怪しいことを言う。これは誤解だろう。太陽は一日出ているわけでないし、日射を取り入れるなら窓からの方が遥かに多い。暖房を考えたら、断熱材を施すことに何の問題もないが、現場で働いている人は、意外と違うように捉えているのかもしれない。

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