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還流独歩

外断熱工事 その2 2011.10.06

お父さんは関係ないことを話し続ける。「自宅の暖房に地中熱を利用したヒートポンプを採用したんだけど、いま建てるならガスエンジンが良いかなと思っているよ。確か日本の会社から、良いのがいくつも出てたはずだな。電気も熱も取り出せるからね。やっぱり天然ガスかな」。勝手な持論と決めつけるには失礼だが、こういったことはよく勉強しているようだ。ドイツの人は、暖房にはうるさい人が多いから、お父さんの言うことも分からないではない。

「確か日本の住宅は木造が多いんだよね。でも、私は一度も行ったことはないけどね。最近の日本はどうなんだ。大丈夫なのか」。これまた回答するのには難しい質問だ。最初は私から問いかけたのに、完全に話を聞く側に回っている。お父さんは気がついたように、「ああそういえば、断熱材の表面には下地材を塗って、あとは仕上げの塗装をすれば、この工事はそれでお終いだよ」。脚立に乗った二人の若者は、すでに下地塗りを始めている。

午後、所用でその前をまた通ったら、朝に見えていた断熱材はすべて下地が塗られ、あとは乾燥したら仕上げの色を塗る状態になっていた。その下に断熱材があることなど、おそらく分からないだろう。「良い仕事ですね」などと、お父さんに話しかけようかと思ったが、話が長くなりそうなので、今度は気がつかれないように通り過ぎた。そういえばお父さんが言っていた。「断熱改修工事は、最近、本当に多いよ」。その口ぶりに余裕さえ感じられる。

これから冬を迎えるにあたって、住まいを暖かくする工事は、もうそろそろ終えなければならない時期になったが、それでもまだ断熱改修工事は、いたるところで見かける。ドイツは、もう何年も前から断熱改修に力を入れているから、それが功を奏しているのだろう。暖房主体の国だから、悪く言えば、断熱材を厚くするという一方向的な進歩で解決できるという面があるのは、ある意味、羨ましいと思う。それについてはまた書きたいと思う。

今日は、簡単に書き挙げようと思ったのに、お父さんのお陰で長くなってしまった。

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