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還流独歩

第二回 北方型住宅賞に寄せて その4 2011.11.17

今回の講評では、家を暖かくする方法は、まだ完全ではない面はあるものの、いろいろな普及活動や多方面への告知、そして、さまざまな分野の人たちの活動を通じて、ある程度の水準にまで達しているとの認識が定着して来ているようだ。それは「あったか長持ち、ともに育む北国の住まい」という今回の賞の目的の一つであり、それと同時に、そこに住む人の暮らしを豊かにし、ともに育むには「家族」の存在が欠かせないということである。つまり、豊かさをつくるのは家族なのだ。

今回、私が受賞を頂いた家は、応募時に「家族と太陽が交感する住まい」という名称にした。そして建築主の要望である「明るさ」「暖かさ」「一体感」「家族感」という四つの骨子を、大きな四つの開口部で表現した。講評によると、「外見はいたって単純に見えるが、建築主の四つの要望が開口部に具現化され、家族感が見える家になっている。しかも個性的な色彩が審査員の共感を呼んだことから、優秀賞に値する」とのことであった。有難いことである。

現在、北方型住宅は、その登録数が1,500件近いと聞いた。さまざまな問題を乗り越えて来た北国の住まいは、技術的な解決策から、豊かな住まい、そして豊かな暮らしへと徐々に変遷してきた。世紀が変わって10年の歳月が流れ、いま荒谷先生が仰っていた水準へと、ようやく達しつつあるのかもしれない。それまで一世代にあたる30年という時間が必要だったのだろう。あるいは家を建てたいという人たちの意識も大きく変わって来た気もするのである。

話は戻るが、北海道に生まれながら、もはや北海道では暮らしていない自分は、郷里に対して、どこか後ろめたい気持を持っていたし、それはいまも同じである。東京の大学で建築環境学を学ぶ中で、いつか北海道に関わる仕事をしてみたいという気持が心の中の片隅に漠然と存在していた。そして今回、偶然にも受賞を頂けたことで、ほんの少しだけれども、郷土に貢献できたような、そんな気がしている。それと同時に、何とも言えない肩の荷が降りた感じさえ受けている。

最後にお伝えしたいことがもう一つある。112点の応募作品の中から優秀賞3点の一つに選ばれたのは、建築主と施工会社に恵まれただけでなく、いつもお世話になっている「すわ製作所」の皆さんから、多大なる援助を頂けたからに他ならない。困難な状況に直面したとき、代表の眞田さんには、いつも的確な指示と、方向を軌道修正する助言を頂いた。所員の皆さんは、いつも快く迎えて下さり、一緒に作業する中で本当に多くのことを勉強させてもらった。

北海道建築指導センターからいた受取った表彰盾には、エネクスレインと私の名前しか記載されていないけれども、今回の受賞は、すわ製作所と一緒に頂いたものであることは間違いない。多忙を極める中で、数限りない支援をして頂いた同事務所の皆さんに、この場を借りて、心より厚く御礼申し上げる次第である。

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