理念 建築 略歴 連絡
文章 視察 還流独歩 大福企画
還流独歩

名刺の整理 その2 2011.12.16

となると、保存してある名刺とは一体なんなのだろう。メールで連絡を取る機会が極めて増えた最近の状況を考えると、名刺というのは、結局のところ誰と会ったかという記録でしかないように思う。もちろん、その通りなのだが、その方とすぐに連絡を取るかどうかは、また別問題のような気がする。

名刺交換をするときには、二つの状況が考えられる。一つは、互いを知る人からの紹介を通じて、最初に電話やメールでの連絡を取らせてもらい、そのあと初めてお会いしたときに、改めましてという形で名刺をお渡しする場合であり、もう一つは、ある会議や会場などで互いに偶然にも居合わせたから名刺交換をする機会を得るという場合である。

この二つの状況を冷静に再考してみると、お会いしたあとのつながりが強くなることが多いのは、やはり誰かからの紹介を頂いた場合ではないだろうか。もちろん、何かの場で初めてお会いした方であっても、その後の関係が密になることもあるかもしれないが、私の経験からいうと、ほとんどの場合が前者である気がするのである。

私がこうして活動ができるのも、そのほとんどが、これまでお世話になった方々から、新しいつながりを頂けているからに他ならない。そういった機会を頂く方とは、頻繁に連絡を取らなくても、相手の情報は磁気媒体に入っている。そうなると、もはやその方の名刺など手元に残しておく必要などまったくない。

かなり強引な意見になるが、携帯電話で連絡を取り合う人の名刺は不要ということにさえなる。住所が必要になるのは、残暑見舞いとか、年賀状のような季節の便りを送るときくらいなものだろう。中元や歳暮の季節もあてはまるかもしれない。大抵の会社はウェブサイトを持っている。住所がわからなければ、それを見て確認すれば良い。

つまり、自分の手元に残しておく個人情報は、実は最低限度で良くて、わからなければ、あとは知り合いを辿って行くか、あるいはインターネットのような他力本願的情報網から連絡先を得ることが十分に可能なのだ。携帯の電話番号がわからなくても、何人かの知り合いの携帯に電話するか、その人の会社に連絡して訊けば解決するだろう。

一方、名刺を見直しても、おそらく自分からは絶対に連絡しないであろうという人も数多くいる。3年前に会った人で、顔も想い出せないような方に、いきなり電話することなどあるだろうか。それは人にもよるのだろうとは思うが、私の場合、いままで一度もないような気がするし、そしてこれからも、おそらくないだろう。それは互いにいえることだ。

« »