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還流独歩

冬の太陽 2012.01.06

年が明けて、少しずつ日が長くなっているようだが、それでもまだ、夕方になるのが実に早い。晴れている日でも、午後3時過ぎには太陽が傾き、歩いていると長い影をつくる。この時間になると背の高い建物の上にだけ陽が当たるので、それを見るだけでもそろそろ夕方というような雰囲気が感じられる。

冬の太陽は高度が低いから、夏に比べて、地球の表面にある大気圏をより長く通ることになる。だから晴れていても日射が弱々しく感じられるのだが、それでも鉛直面で受ける日射量は、1㎡当たり300Wから500W程度になるのではないだろうか。これは小さな電気ストーブ一台に相当する。実際、陽射しを浴びると暖かく感じられるのはそのせいだ。

いま太陽光発電が、これまで以上に脚光を浴びている。それは大切なことではあると思う。電気はとても質の高いエネルギーの一つだから、照明にもなるし、動力にもなり得る。あらゆるものを駆動させる電源であり、そのまま熱に変換して、ものや空間を温めたりすることも可能だ。でも、私たちの生活に必要なのは電気だけではない。

いや、電気があれば、大抵のことは可能だ。深夜電力を使った温水給湯器はすでに広く普及しているし、例えばドイツでは、電気を使った壁付けの瞬間湯沸かし器も非常に多い。水が流れる部分に小さな電熱器があり、それを使って、瞬時に水を温める方法である。古い建物が多いので、新たにガス配管を施すのは難しいからだ。

話を大きな視点に戻すと、地球を温めてくれているのは太陽である。太陽なしに地球上の生命の維持活動は絶対に成り立たない。電気も素晴らしいが、それとは比較にならないくらい太陽は偉大な存在だと改めて思う。だから、その太陽からの日射を室内にそのまま導き入れて、それを暖房の代わりとして使うことは、地球の営みに限りなく沿った手法の一つだと思う。

エネクスレインの理念の一つに、「環境からの働きかけを使い捨てにする建築」ということを掲げているが、日射による自然暖房というのは、太陽からの熱をそのまま使って自然に返す究極の使い捨てに他ならない。太陽光発電も、太陽熱利用も極めて大切なことだけれども、難しい技術を使わずに、建築と環境を結びつけることは、とても大切だと思うのである。

夏の太陽は暑いし、冬だって毎日、快晴というわけではない。だから「陽射しを使った暖房は重要です!」と声高に叫んだところで、まともに聞き入れてくれる人は少ないかもしれない。でも、太陽からの日射を使って室内を暖める機能を持った建築というのは、格好良いのではないかと思うのだ。それが建築デザインなのではないかとさえ思う。

太陽からの光や熱を適度に取り入れたり、あるいは遮ったりできるような環境と交感できる建築を、これからたくさんつくって行きたいと思っている。それが、できるかどうかはわからないし、建築に携わる一人の単なる我が侭だと捉えられる可能性も大きいけれど、そんな視点が大切なのではないかと、冬の太陽を見ながら、そんなことを感じるのである。

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