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還流独歩

プールの休憩時間 2012.01.12

私が以前から疑問に思っていることの一つに「プールの休憩時間」がある。いや、疑問などということは通り越して、日本中のプールから撤廃して欲しいとさえ強く願うものである。おそらく、泳いでいる人の安全を確保する必要があるのと、管理上の問題の二つが関係しているのだと思うが、笛の合図とともに一斉にプールから全員を上がらせ、監視員が誰も泳いでいないことを指差し確認しているのを見ると、何だか軍隊のようにさえ感じられる。

この休憩時間の設定は、プールによって大きく違うようだ。いつも行く中央区の某プールは、1時間おきに5分だし、世田谷総合運動場にあるプールは2時間おきに10分である。あるいは、もう少し長い間隔をおいて休憩時間を設けているプールもあるかもしれない。プールは裸に近い状態で利用するし、混雑していると監視員の目が届かない状況で怪我をする人が出る可能性もあるから、管理者が休憩時間を設けるのはまったく理解できないわけではない。

しかし、泳ぎに来ている立場から考えると、強制的に休憩させられるということは、休まずに泳ぎ続けたいという権利を奪われることになる。例えば、2時間、休むことなく泳ぎたいと思っても、それができないのだ。そんなに長い時間を泳ぐ人は滅多にいないかもしれないが、水泳を習っている人なら、それくらいの時間、泳ぎ続けることは十分に可能である。しかも休憩時間があることにより、 泳ぎ始める時間が制限されてしまうことになる。

決まりは必要だし、それを守ることも大切だ。でも、プールの休憩時間というは本当に不思議な規則である。休憩するかどうかなど、本人が考えて決めれば良いだけの話だ。海水浴場に休憩時間などないし、滑っている人が一斉に休む時間のあるスキー場など聞いたことがない。ちなみに、ドイツのプールには休憩時間はない。そんな決まりをつくったら、ドイツ人は「休むか休まないかは本人が決めることだ」と激しく抗議し、暴動が起きる可能性さえ否定できない。

そんなことを言いつつも、私は波風を立たせることはしないので、プールの管理者に対して、なぜ休憩時間があるのかの理由を問いつめたことはないし、休憩時間の撤廃を要求する要望書を送ったこともない。ただ最近になって、これはきちんと尋ねてみる必要があるのではないかと思っている。たかがプールの休憩時間とはいえ、こういった自己管理に関わることが、日本のあらゆることに共通している面があるようにさえ感じられるのである。

楽しい話題ではなくて申し訳ないが、休憩時間になって誰も泳いでいないプールと、そこから上がって何をするわけでもなく、ただ座って休憩時間が終わるのを待っている人たちを見ると、何だか可笑しさがこみ上げて来て、一体、この時間というのは何なのだろうと考えてしまうのである。

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