理念 建築 略歴 連絡
文章 視察 還流独歩 大福企画
還流独歩

暖房の方法 その2 2012.01.19

少し気になったので、石炭の生産量の変遷を調べてみた。ある統計によると、第二次世界大戦の前と1950年代に最も多く生産され、その量は年間5,000万トンを超えていたが、1967(昭和42)年を境に急激に減少し始め、10年後の1977(昭和52)年には1,800万トンまで落ち込んでいることがわかった。ちなみに10年前の2002(平成14)年の生産量は、わずか120万トンであり、最盛期のわずか2.4%である。日常生活で石炭を見ることは、ほとんどなくなってしまった。

その一方で、世界の石炭発掘量は、逆に増加し続けていることも初めて知った。産業革命を支えた石炭の役割は、ほぼ石油に取って代わられたのかと思っていたが、どうもそうではないようだ。二酸化炭素の排出と地球温暖化の問題が指摘されてはいるが、ガスと石炭を併用できる発電所が注目を集めているし、石炭も立派な化石燃料の一つだから、日本でもこれから石炭の生産量が増えて行くかもしれない。

話をもとに戻すと、最初に最も簡単な暖房方法は「火」を使うことだと書いたが、それは燃えるものがあるからだ。火鉢なら「炭」であり、薪ストーブなら「薪」だ。石炭ストーブは、無論「石炭」である。ガスには、「都市ガス」と「プロパンガス」があるが、他と同様に燃焼する。こういった熱の源(みなもと)になるもののことを、専門用語で「熱源」と呼んでいる。わざわざ書かなくても知っている人は多いかもしれない。

これらの熱源はすべて、長い地球の歴史の中でつくられて来たものだ。そして、この熱源の中には「電力」も含まれる。火力発電と原子力発電は、地下資源を燃やして得られる水蒸気の力で電力を生み出す仕組みだから、熱源は化石燃料だと言えなくもないが、水力や地熱、太陽光、風力なども発電に使われているから、熱源というと、一般的には「ガス」か「電力」、あるいは「石油」に大別されることが多いはずだ。

そして、ここからが本題である。室内を暖める方法として、一体、どの熱源を使うべきなのだろうか。冷房するには、一般の家庭だと電気で稼働するエアコンしか考えられないと思う。しかも、そのエアコンが暖房も行なってくれるのだから、極めて便利な機械だ。冷房と暖房のために、別々の熱源を用意するというのは、単純に考えれば無駄ということになる。しかし、生活に必要なのは冷暖房だけではない。温水も必要だ。それも含めて熱源を考える必要がある。

我々の生活に必要な温度を改めて考えてみると、望ましい室温というのは、夏も冬も20℃から25℃程度だろうか。お風呂やシャワーに必要な温水の温度は、40℃よりも少し高ければ十分だ。温水暖房となると50℃から60℃が必要になるだろう。何か暖かい飲み物が欲しいときや、即席麺をつくるときは100℃の熱湯が必要になるし、普通に調理する場合だと、IHという例外を除けば、数百℃の熱さが求められる。その要求を満たすための熱源はどうあるべきなのだろうか。

« »