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還流独歩

100本で2500円 2012.01.23

ドイツのペットボトルの「回収再利用料金」は、現在、一本あたり25セントである。簡単に言い換えると「デポジット」のことであり、日本語だと、「預かり金」とか「保証金」と呼ばれている。その額は内容量にかかわらず、0.5ℓでも1.5ℓでも、すべて25セントだ。1ユーロが100円になってしまったいま、25セントは25円だから、空のペットボトルを4本集めると100円になるわけで、10本だと250円、100本回収すれば2500円に換金できることになる。

ドイツでは、ペットボトルを回収する機械が、大型のスーパーマーケットに備え付けてあることが多い。使い方は簡単だ。空になったペットボトルを投入口へ入れると、中で圧縮される音が聞こえるのと同時に、投入した本数分の回収金額が表示される。全部入れ終わったら、ボタンを押せば回収額が印字された引換え券が出力される。それを会計のときに差し出すと、買物の額から差し引かれるし、その券だけをレジに持って行けば現金と変えてくれる仕組みである。

いま、日本の自動販売機の脇にはペットボトルの回収箱が置かれていることが多い。そこにはたくさんの空きボトルが捨てられているし、時折、溢れている光景も見かけることがある。もし、それらのすべてが、ドイツと同じように1本25円で交換できる体制が整っているとしたら、回収箱からはペットボトルが間違いなく消え去るであろう。その分、現金と引き換えできる回収機には入り切らないほど集まってしまい、逆に問題が生じる可能性は大いにあるはずだ。

この制度がドイツで導入されてから、もう5年くらい経つだろうか。いまでも、街中にあるごみ箱の中身を見て歩く人を見かける。大抵は、あまり奇麗な格好をしている人ではないが、身なりが普通な人もいる。ドイツは、欧州連合の中では、まだ経済が多少なりとも堅実ではあるが、相変わらず失業者も多く、いつだったか、ペットボトルを回収して歩く人の素顔を追った記事を読んだことがある。

そういえば何年か前、ミュンヘン空港の手荷物検査場の前に置いてあるペットボトル用のごみ箱に、空港という場には、まったく似つかわしくない風体をした人が、空のボトルを何本も集めているのを見かけたことがある。国際線には、飲み物の持ち込みができなくなったから、検査の前に捨てる人が多いのだろう。何もしなくても、そこにいるだけで25円が手に入るわけだから、闇雲に探して歩くよりも、遥かに効率的な回収方法に違いない。

そういった人が、いまも空港内で空きボトルを集めることが許されているかどうかまではわからないが、ともかく魅力的な回収作業であったことは確かなはずだ。だからドイツでは、先述のように、街の中にペットボトルが氾濫している光景は見られない。実際、ペットボトルを回収して再利用する過程が。化石燃料の消費を本当に抑えるものなのかどうかまでは私はわからないが、日本でもそういった取組みが行なわれても良いのではないかと思ったりするのである。

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