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還流独歩

雨樋再考 その1 2012.02.02

昨日に引き続いて、雨樋の話である。

東京のほとんどの家には雨樋がついている。これまであまり意識をして来なかったけれど、その歴史を調べてみたら、かなり昔からあったようで、城などの重要な建造物に設けられたのが始まりらしい。それから家屋の密集度の高まりとともに、屋根からの雨水の処理が問題となったり、商いを営む店が、客に雨が当らないようにとの配慮で取付けられてきたという背景がある。そして第二次大戦後に、住宅建設が一気に増えた頃から、どの家にも雨樋が設けられるようになった。いまや雨樋のない住宅というのは、ほんの一部を除いて、ほとんど見かけないのではないだろうか。

そこで考える。雨樋は本当に必要なのだろうか。東京のような密集地では、少し強い雨が降ると、宅地内には浸透し切れないから、雨を下水に適切に流し去る機構が必要になるということは理解できるのだが、土地が広いところなどでは、雨樋がなくても良さそうに思える。周りにほとんど何もないような広大な土地に建っている住宅などでは、雨樋がなくても良い場合もありそうだ。雨樋を設置すべきかどうかという問いは、実に些細なことに思えるが、雨水の排水方法というのは意外とないがしろにされつつも、結構重要であり、設計には、それなりの配慮が必要になって来る。

話を戻して、雨樋がない場合のことを考えてみる。1階の屋根から落ちる雨水は、それほど勢いがないかもしれないが、2階の屋根からの雨だれは、その跳ね返りで壁が汚れてしまうことが多い。実際、犬走りなどに砕石を敷かないと、1階の壁の地面に近いところは、予想以上に汚れるものなのだ。あるいは、二階の屋根からの雨だれが1階の屋根に当る場合、その音が意外と気になることも多いし、また雨が同じ場所に当り続けると、その部分だけ、屋根材が劣化してしまう可能性も出て来る。

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