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還流独歩

飛行機の中の壁 その3 2012.03.09

三つ目は、テーブルが肘掛けに収納されているため、他の席と違って、肘掛けが持ち上げられないことだ、中央の2席の間にある肘掛けだけは上げられるが、残りの二つは完全に仕切りなっているので、4列全部を使って横になることができない。これまた残念である。そして四つ目は、カップを置くホルダーがないことだ。テーブルは、肘掛けの中から出さないといけないから、これも意外と煩わしい。しかも、そのテーブルが片持ち支持なので、反対側が微妙に上下に揺れて、安定性に欠けるのである。PCを乗せて文字を打つと、微妙に揺れて鬱陶しい。

さらに細かいことだが、五つ目は、離発着のときにモニターを収納しなければならないことである。他の席だと目の前にあるので、どこを飛んでいるのかや、外を映し出した映像が、離発着のときにも見られるが、この席だとそれができない。もっとも、モニタなど、ほとんど気にもしていないので、どうでも良いことではあるが、試しにモニターを足下から引出してみたら、画面が近くにあり過ぎて、どうも馴染めない。自分でもやけに細かいことを気にするのものだと思ったりするが、気になるものは仕方がないのだ。

しかし、ずっと乗り続けて感じたことは、良い面も多少はあるということだ。前の人が背もたれを倒して来ることもないので、前の席から圧迫感を受けることがない。それから、今回は隣りに誰もいないが、おそらく席を立つのも意外と楽だろう。足が伸ばせないのが苦痛だと言ったが、立って、少し運動をすれば、その問題は解決するようにも思う。飲み物を置きたいときに、必ずテーブルを出さないといけないのも不便だが、何日も監禁されるわけではないから良しとしよう。そんなことを考えつつ、一眠りしたら行程の半分が過ぎていた。

機内の後方は団体客で占められているようで、最初の席に座ったときも、まわりは賑やかだったが、最前列の方は、個人での移動の人が多いのか、席もまばらなところが多く、またほとんど会話もないから、実に静かである。この巨大な飛行機を推進させる大きな内燃機関が発する音と、誰が住むのかわからないシベリアのはるか上空の空気を刻んで進むときの風切り音が妙に心地良く感じられる。長距離の飛行機の移動というのは、とても贅沢な時間なのだと思う。

エアバスA380は定刻よりも10分ほど遅れて8時45分に成田空港へ着いた。早朝に着く便だと、いつもは眠くて仮眠を取ることも多いのだが、今回は、それほど辛くない。思い切ってプールへ行き、1750m泳ぐ。そのあと打合せのため都内を移動する。何度か急激な睡魔が襲って来たので、車内で10分ほど寝てしまったが、それ以外は、普段と変わりない状態のままであった。2時間くらいとはいえ、機内で取った睡眠が大きいのかもしれない。20時前、長年、お世話になっている方との懇親会に合流し、帰国早々、楽しい時間を共有させて頂いた。感謝である。

24時間近い移動のあと、12時間ほど活動し続けた一日だった。今日は、もう十分である。

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