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還流独歩

同期な夜 その1 2012.03.14

ある打合せのため、以前、勤めていた事務所を訪れた。前回、来たのはいつだったろうか。おそらく、昨年は一度も顔を出したことはなかったと思う。受付で担当の方の名前を伝えているうちに、一緒に仕事をしていた方が偶然にも現れ、私の顔を見るなり、そのまま腕を掴まれて社長の前まで連れて行かれた。そんな流れになりそうなことは予想していたから、何の問題もない。社長や周りの人に軽く挨拶を済ませて、すぐに打合せに入ろうと思うが、部署が変わった先輩と少し話し込んでしまい、それからようやく本題に移った。

打合せのあとはお決まりで、下の階から、順次、挨拶巡りである。忙しい仕事中に、わざわざ席まで出向くこともないのだが、そのまま声をかけずに帰るのも失礼かもしれないと思ったりもする。ただ、顔を出すと、何かと長くなってしまうし、最近はどうしているのかと、いろいろと訊かれることに対して答えるのも面倒だったりするけれど、別に隠すようなことはないから、そこは正直に話して、うまく立ち回ろう。私が勘違いしているだけなのかもしれないが、どこに行っても快く迎え入れてくれる気がする。

何度も書いたが、十何年も前に退職した会社へ、こうしてまた気軽に立寄ることができるというのは、とても貴重なことだし、そして本当に有難いことだと思う。三年ほど前に就任した社長とは、一年前に懇親会の席を設けてもらったし、何度かメールをやり取りをしている先輩からは、飲みに行く話も頂いている。実際は、そんなに時間がなく、頻繁に会うこともないのだが、何かあるたびに、声をかけてくれるし、以前の上司とも、たまに電話で相談に乗ってもらうこともある。気がつけば、もう20年近い付き合いになってしまった。

同期入社の仲間にも会った。一人は10年振りくらいだろうか。本人はいたく驚いていたが、こういうときは、顔を出す側よりも出される側の方が不意を食らうものである。いろいろと話しているうちに、二人の同期と飲みに行くことになった。滅多にない機会だからと誘ってくれたのである。会社を出て、山手線の某駅前の居酒屋に入る。最初は近況報告のような話題が多かったが、次第に会社の話になる。入社してから19年も同じ会社にいるわけだから、互いに新人だった頃に抱えていた問題とは、また次元の違う難しい面を抱えているようだ。

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