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還流独歩

東京建築案内 その3 2012.05.20

そう答えながらも、本当にそれで良いのかという気持が心の底でうごめく。建物の熱的性能を上げ、建築的な工夫を凝らすことによって、冷房負荷や暖房負荷を減らし、建物で消費される化石燃料を少しでも抑えるべきだと私は思っている。でも、そのための対策にはお金がかかる。低燃費建築を目指すと宣言しておきながら、それを実現することは簡単ではない。

彼らを案内しながら考えた。彼が質問して来た内容というのは、おそらく彼だけが感じていることではないはずだ。ドイツの設計事務所にいたとき、同僚から訊かれたことを想い出した。「日本は、夏がものすごく暑いと聞いているけれど、日本の現代建築には、ほとんど日よけがないよね。日射を適切に防ぐための工夫はしないの?」。誰か私の代わりに答えて欲しい。

そして話は一旦、大きく逸れる。表参道から地下鉄で都庁前へ移動し、第一庁舎の展望台へ向かう。何だか雲行きが怪しくなって来た。西側の方から、雨雲がやって来ているのが見える。少ししたら、シャワーのような強烈な雨が降って来た。ただ、その雨雲の後ろは晴れいてるようで、雨の塊が光に輝いて見える。その光景は、何だか幻想的でもあった。

そろそろ昼食の時間にしようと思っていたのだが、外に出るには、まだ早いので、展望台のカフェで一休みする。その間に、雨は通り過ぎて行った。新宿の副都心を歩いて抜けて、駅の西口へ向かう。お昼ごはんに何が良いか訊いてみると、刺身を食べたいと言う。あと、味噌汁も飲みたいらしい。難しくはないが、簡単でもない要望である。

そう多くはない飲食店を見て回っていると、電気店の脇に寿司屋が一軒あった。正直なところ、私一人だったら入らないようなところだが、ここは安易に妥協しよう。お店を切り盛りしているお母さんに訊くと、昼の握り定食?の他にも、いろいろと注文を聞いてくれそうだ。先客の片付けが終わるのを数分待つと、奥の席に通された。

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