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還流独歩

東京建築案内 その9 2012.05.26

話は日付を遡って、まだ続いている。

暑い夏を涼しく過ごすことができる冷房技術は素晴らしいと私は思う。多分、冷房がなかったら、夏の暑い時期は、仕事にならないはずだ。それを支えるために、多くの方が努力を重ね、技術を進化させ、機器の効率を上げる工夫を続けて来た。だから私は、電力需要の増加の原因が、すべて冷房設備に責任があるなどと言い切ることはとてもできない。

5月23日の文末に、「冷房負荷を増大させて来たの建築ではないのか」という、やや挑戦的とも思えることを書いたが、それは昔に比べて、特に都心は事務所建築が増加してきたという背景があることもわかってはいる。そんなことを考えるのは、設備設計を行なってきた自分に対する投げかけでもあるからだ。

現代の建築は、設備がないと成り立たない。逆に言えば、いまの建築を支えているのは、実は設備だと言っても良いくらいではないかとさえ思う。いや、その対象は建築そのものではなく、内部空間で快適な生活を陰で担っているのだ。個人の住宅なら、冷房がなくてもどうにか暮らせるかもしれない。

あるいは、小さな事務所で、一人や、あるいは数人で働いているのであれば、冷房に頼らなくても仕事はできるのかもしれないが、何十人もの人が同じ空間で働く場所に冷房がないというのは、かなり厳しい話である。設定温度を28℃にすることが奨励されているが、その空間は、かなりの暑さになるのではないかと思う。

ある方が言っていた。「省エネも理解できるけれど、設定温度を上げた状態では、暑くて集中力が落ちるし、書類が腕に貼り付いたりして煩わしい。本当に暑い日は、汗が書類に落ちたりすることもあるから、それも気にかかる」。地下資源の消費を抑えるのが大切なのか、仕事を効率良く進めることの方が重要なのか、一体、どちらなのだろう。

スイス人の建築家が投げかけて来た「日本の建築家は、建物で消費するエネルギーに関心はないのか?」という疑問は、私の頭の中をずっと巡り続けている。それに対する答えを探し続けなければならない。いつ見つかるだろうか。一緒に考えて行きましょう。どうぞ、宜しくお願い致します。

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