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ドイツ的片付け論な夜 その1 2012.08.04

都内某所にてドイツ人の友人と会う。知り合ってから、6、7年くらい経つだろうか。彼は基本的にドイツ在住だが、年に5、6回、日本に来て、数週間滞在し、そしてまたドイツに戻るという生活を続けている。いつもは、日本中をくまなく動き回っているのだが、今回は、わずか10日間だけで、しかも東京が中心だという。

互いの近況報告のような感じで始まった男二人での懇親会は、周りから見ると少し奇妙に映るかもしれ合い。というのは、彼は日本語を話し、私はドイツ語で返すからだ。それでも何の問題もなく会話は進んで行く。そして話題は次第に、日本とドイツの何が違うかという話になる。これはいつものことだし、既にここでも何度か書いた。

そして毎回のごとく、住まうということの本質は何なのかというような簡単には答えの出ない話へ展開する。かつて15年近く日本で暮らしていた彼は、両国間の違いを知りつつも、未だに埋められない溝があると感じている。それをここに書いて良いものかためらわれるが、敢えて書かかせてもらうと、その一つは、何のことはない「片付け」だという。

それについては、私もいままで何度も書いてきたし、巷では「片付け術」や「捨てること」で生き方を変えるというような機智に富んだ情報が溢れている。そんな状況において、整理整頓をさせると世界一ではないかと思われるドイツ人から、「住むことの質」と「片付け」について直接指摘されると非常に耳が痛い。

彼は普段は言いたくはないけど、実は心の中でいつもそう感じているという。日本の生活空間や職場には、片付かないものがたくさんあって、それが実にもったいないと…。そういった環境では、余裕のある生活はできないし、仕事も良い成果が出せないのではないかとさえ言う。「人生の半分は片付け」という諺がある国の人は手厳しい。

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