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還流独歩

八丁堀 2012.08.22

中央区に八丁堀という場所がある。私も茅場町に事務所を構えるまでは、たまに通り過ぎるだけの駅だったが、互いの距離がとても近いので、いまは頻繁に利用している。名前から判断すると、それなりの「堀」があったに違いないだろうし、「八丁」というのも気になる。地名の由来について調べるのは好きな方だから、少しだけ調べてはみたが、似たような情報ばかりで、あまり詳しいことはわからなかった。

いまの八丁堀に何があるかと訊かれても明快な答えは多くはない。会社と集合住宅が混在する、つかみどころのない街のような気もする。しかも、都心でありながら中途半端な場所という感じも否めなくはない。でも、東京駅からは歩いて来れるし、銀座にも近い。タクシーなら初乗り料金で着く。茅場町を利用すれば、東西南北の移動も楽だし、京葉線も通っているから千葉方面に行くのも便利ではある。

本題はここからだ。夕方以降に地下鉄の八丁堀駅を利用すると、舞浜方面に君臨する某巨大娯楽施設から帰ってきた人たちと遭遇することが多い。普通の会社勤めの人に混じって、某マスコットキャラクターの帽子をかぶり、大きなお土産袋をたくさん抱えた家族や、女の子同士の集団、男女が入り交じった賑やかな若者たちが地下鉄のホームや連絡通路に溢れている。小さな子供は、風船を持っていたりして、そこだけが違う雰囲気を醸し出している。

夢を売る娯楽施設から帰ってきた人たちは、皆、元気だ。日本語だけでなく、アジアの他の言語も聞こえて来る。ただ、作業を終えて、やや疲れ気味になっている私にとって、そういった人たちに囲まれると、正直なところ、かなり邪魔臭く感じてしまうのは確かだ。でも、楽しそうな人たちを見るのは決して嫌ではない。一日を終えて、心地良い気だるさを引きずる私と、想い出を一杯に抱えた人たちが交差する場所が八丁堀だったりするのである。

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