理念 建築 略歴 連絡
文章 視察 還流独歩 大福企画
還流独歩

巳年初飛行 その2 2013.01.12

その後も、何度か仮眠を繰り返しているうちに、フランクフルトが近づいて来た。そのまま順調に着陸するのかと思ったが、空港の20kmほど手前で大きく右に旋回し、逆方向に向かい始めた。おそらく混雑か何かの影響で、着陸許可が下りなかったのだろう。目の前のモニターに示された目的地までの距離が逆に増えて行く。いま飛行して来たところを斜めに通り過ぎ、40kmほど離れてから、8の字を描くように、今度は左に旋回して、ようやく最終の着陸態勢に入った。順調に降下を続け、もうあと数秒で着地しそうだというときに、飛行機は急に加速し始めたのである。そして、着陸することなく上昇してしまった。滑走路が遠のいて行く。周囲の人に広がる微妙な疑問。

その後、機長から状況説明があった。追い風が強いため着陸を一旦回避したという。こんなことは初めてである。私は航空関連の専門家ではないが、着陸体制に入っているときに、いつもよりも高度が高いような気がしていた。しかも着陸位置が、滑走路の端ではなく、通常よりも前の方に行き過ぎているようにも見えた。追い風の影響を受けて、十分に降下できなかったのかもしれない。空港を離れた飛行機は左に旋回し、また20kmくらい離れたところまで飛んで行き、もう一回、左に大きく回って、二度目の着陸態勢に入った。今回はどうだろうか。誰も口にはしないけれど、無事に着陸して欲しい。そんな心配をよそに、二階建て飛行機は軽い振動とともにフランクフルト空港に着陸した。

荷物を受け取り、フランクフルト長距離新幹線駅を15:09に出発するICE新幹線でケルンに向かう。座席予約の表示が出ている席があったが、誰もいないので、隣りの席の人に声をかけてから窓側の席に座る。窓越しに外に目を向ければ、見慣れた光景が通り過ぎて行く。新幹線は、ライン川をまたぐホーエンツォレルンン橋の上で、いつものように減速したあと、静かにケルン中央駅へと到着した。天候は曇り。気温は0℃くらいだろうか。寒いけれど、昨年のこの時期に体験した氷点下18℃に比べたら遥かに暖かいし、東京とほとんど変わらない気もする。雪もまったくない。駅前の停留所で5分ほど待つと、バスは定刻通りにやって来た。今回も、20時間近い移動を無事終えて安堵である。

« »