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還流独歩

愛用の文房具 その2 2013.05.06

20年も前に買ったのと同じものがあるとは思えないという気持が先走ると、そんな諦めの気持が先行するのだろうか。やっぱり見つからないなと思いが強くなったとき、ふと見覚えのある黒いシャープペンシルの塊が見えた。まだあった! 声には出さなかったものの、少し飛躍した表現を使えば、絶版になった本を古本屋で見つけたかのような驚きや喜びと同じような感覚だった。普段はあまり製品の紹介などしないのだが、ここは敢えてお伝えしておきたい。その一本とは、「Pentel/ぺんてる GRAPH 1000 for pro 0.9/PG1009」である。何本か芯の出方を確認し、堅くて奇麗な音が出る一本を購入した。

それにしても、しっかりとデザインされたものは、長く生き残るということを改めて実感させてくれた。金額にして一本1050円である。決して安くはないが、長く使うことを考えると高いはずなどない。実際、20年も使ったのだから…。他にもステッドラー社の製図用のもあった。こちらは1250円だっただろうか。でも、あまり好みではない。他にも安いものが溢れているけれど、どれも手にしようとは思えない。個人的には私が手にしているものの方が一番格好が良いと勝手に思っている。この一本には、そう思わせてくれる何かがある。

私はシャープペンシルのデザインなどしたことがない。ないけれど、新しいのを手に持ち、その形状やデザイン、重さ、持ちやすさなどを確認すると、実によく考えられている一品だと思う。私の手元から忽然と消えてなくなってしまったシャープペンシルは、一部が剥げたり、落したときについた傷が残ったりもしていたが、それ以外は何の問題もなかった。指が当る部分にある滑り止めのゴムも、まったく劣化しなかったという驚異的な製品である。だからこそ20年間も、いやおそらくもっと長く、つくり続けているのだろう。でも、一体、年間に何本売れるのだろうか…。

加筆訂正:2013年8月10日(土)

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