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還流独歩

東へ9000km移動 その3 2013.07.05

以前にも何度か書いたけれど、どこへ行っても「一対一」の関係が望ましいのではないかと私は思う。お金を払って飛行機に乗る側と、お金をもらって飛行機に乗せる側のどちらが上の立場かというと、そんなことに優劣をつけられるものだろうか。いや、日本では、それがあたり前なのかもしれないし、お金を持っている人の方が、立場的に優位にあるということが当然と受け止められる社会であるようにも思う。今回の場合だと、それは無論、乗客の方であろう。でもこの問題の根底にあるものは「お金」ではない。簡単に言えば、コミュニケーション能力の差ではないかと思う。

いや、でもそんな簡単に決めつけることはできない。日本の人が親切ではないかというと、そんなことはなく、日本を訪れた海外の人の多くが、その優しさや丁寧さに感謝するという話をよく聞くことも多い。いろいろな場合があるにせよ、それは概ね事実ではないかと思うし、もちろん嬉しいことでもある。にもかかわらず、ほんの少し立場が変わると、その落差の乖離が激しくなるのは、どうしてなのだろう。後ろの席の男性たちの客室乗務員に対する横柄な態度も、全くわからないわけではないけれど、それはおそらく、どう接して良いのかわからないからではないだろうか。

翻って、はたして自分はどうであろうか。いま書いたことを自ら戒(いまし)めた対応ができているのだろうか。誰にでも分け隔てなく、優しく接しているだろうか。相手のことを考えて、思慮分別のある対応ができているだろうか。できるだけ、そうするように努めてはいるつもりだが、恥ずかしながら、あまり自信がない。というのも、そういった受け止め方というのは、相手によって大きく違って来るからだ。そんなに難しく考える必要はないのかもしれないけれど、意思の疎通が上手く行かないことはよくあることだ。

そんなことを考えているうちに、何度か眠りに落ちてしまった。飛行機は、定刻よりも30分ほど遅れて、成田空港に到着した。空気が生暖かく、身体にまとわりつくのがわかる。東京に戻って来たと実感するときでもある。空港内でシャワーを浴びて、気分を入れ替えてから都内に向かう。夕方から打合せがあるので、その前に少し休んでから出かける。以前は泳ぎに行っていたが、恥ずかしながら、最近はそこまでの気力が沸いて来ない。今回、東京に戻って来たのも束の間、10日間後には、再びドイツへ向かう。一日を大切にして行きたいと思う。

掲載日:2014年8月20日(水)

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