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還流独歩

長期休載によせて その2 2014.06.08

人というのは不思議なもので、それまで続けていた日課や、日々の中の小さな課題を、一旦、止めてしまうと、それを元の状態に戻すことが難しくなってしまうことがある。その原因などわからないけれど、意外と、生活環境のちょっとした変化などが関係していたりすることが多いのかもしれない。

例えば、それまで何度となく訪れた馴染みの店があっても、一旦、引越をしてしまうと、極端に疎遠になってしまう。それは、新たな引越先が、いままで住んでいたところから非常に離れてしまえば当然のことなのだが、近くであっても、同じことがいえたりはしないだろうか。普段、通る道が一本変わるだけで、日々の行動が変わったりもする。

それはもしかして、「気持の引越」とでも言い換えられるかもしない。あるいは「気持の切換え」とでも言うのだろうか。「気持を切替える」というのは、普通は、いままで悩んでいたことや、考えあぐねていたことを解き放って、前向きに変えることを意味すると思う。あるいは、ときにそれは負の方向へ向かったりするときもあるかもしれない。

私のような個人事業主でも、大きな企業に勤める人であっても、仕事は信頼関係で成り立っている。それを築くには、何年もかかるが、信頼とはときに傷つくやすく、とあることがきっかけとなって、いとも簡単に崩れてしまう。一旦、崩壊した信頼を取り戻すことは、そうたやすいことではないし、元に戻らないことさえある。

もっと下世話なことばに言い換えれば、信用を失うということは、要は相手を「白けさせる」てしまうことなのではないかと思う。それは、いままで密だった関係の間に、急に見えない隔たりが生じてしまうことだとも言えなくもない。その精神的な壁の高さは、10mに感じる場合もあれば、厚さが100mと感じるときもあるかもしれない。

掲載日:2014年8月20日(水)

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