理念/Visionen

エネクスレインは、私たちを取り巻く物事や事象の本質を突いて行く中で生まれる発想を大切にしています。それらのいくつかは、これまで一般的に言われてきたこととは異なる考えもありますが、それはこれからの私たちの生活にとって本当に何が必要なのかを問い直した結果でもあります。
エネクスレインは以下の5つを大切にしています。
1 意匠・構造・環境が一体化した設計
2 環境からの働きかけを使い捨てにする建築
3 多世代に継承される価値のある資産の創造
4 部材の物理的特性を活かした空間づくり
5 数値評価できない価値の再認識
長くなりますが、以下の説明にもお付き合い頂けると幸いです。
1 意匠・構造・環境が一体化した設計
通常の設計過程には、主にデザインを担当する意匠設計だけではなく、さまざまな専門分野の設計が関わってきます。それは建物の規模が大きくなるほど分業化していく傾向がありますが、現代の建築そのものの設計において、意匠と同じように大きな役割を担っているのが、構造と設備の設計です。
建築を支える構造の大切さは、皮肉にも一連の耐震偽造隠蔽事件によって一般により周知されるようになりました。また給排水や電気、通信、あるいは光や温熱環境の調整、そして万一の火災から命を守る消火設備も含めて、それらは私たちの生活を支える上でなくてはならない存在です。
エネクスレインは、「意匠・構造・環境が最初から一体化した設計」を行ないます。
一つの建物をつくりあげるとき、意匠と構造と設備が協力して進めることは当然ですが、多くの物件において、いまもなお意匠設計が主導権を握り、構造と設備はその設計過程に必死に追従して行くのが普通になっています。その状況は少しずつ変わりつつありますが、構造設計者も設備設計者も、意匠から送られてきた図面だけを元に設計を進めながら、意匠が考えるデザインをできるだけ損なわない設計を求められることが多いのは事実です。
構造設計と設備設計が意匠設計と大きく異なるのは、基本的な決定事項が様々な諸条件から算出された数値を元にして設計が進んで行くことです。意匠が提案するデザインに対し、構造と設備の数値による判断は往々にして遅れがちで、その結果が出たときには互いに整合しないことも多いのが実情です。それが上手く解決できないまま設計が進んでしまった建築は、外見上は綺麗にまとまっていても、どこかで何らかの歪が生じています。
エネクスレインは、「意匠計画と構造計画の足がかりとなる環境デザイン」を提案します。
構造設計も設備設計も数値的な解析が非常に重要ですが、その解析結果を建築デザインに反映するには時間がかかります。だからこそ、その前段階において、全体的なデザインの大きな方向性を探ることが極めて重要だと考えます。建築デザインが決まってから構造と設備の設計を始めるのではなく、最初の段階から構造デザインと環境デザインを含めて模索するのです。それがこれからの設計に必要な姿勢だと考えます。
建築のデザインを行なうのは、もはや意匠系のいわゆる建築デザインを学んだ人たちだけが行なうべきものではありません。これからの建築はどうあるべきかを、その形態から見直すくらいの気構えを持って新たな提案ができる環境デザイナーと構造デザイナーが求められているのではないでしょうか。

2 環境からの働きかけを使い捨てにする建築
環境に対する負荷を減らそうと、多くの分野で再利用が行なわれています。また建築の分野でも環境に配慮した建築に注目が集まっていますが、では環境配慮型建築とは一体どのような建物を指しているのでしょうか。人間が造り出した人工の構造物が、はたして本当に環境に配慮した建築だといえるのでしょうか。
環境に負荷をかけず、二酸化炭素の排出をできる限り抑えた建築を実現しようと懸命に努力されている人たちがたくさんいることを私は知っています。だからそういった活動を揶揄したり、批判するつもりはまったくありません。むしろ建築と環境と人間のかかわりを少し深く知りたくなって渡独した私にとって、それは自分自身に対する長年の問いかけでもありました。
エネクスレインは、「環境を使い捨てにする建築」を目指します。
これは過激な表現を使って多くの人の注目を集めることが目的ではありません。また主流の考えに対し極端な反論を掲げることで、その存在を誇示することでもありません。大切なことは、普段の生活の中で私たちが環境や自然からの働きかけを、一体どのくらい意識し、受け止めているかということを問い直したいのです。
太陽が出ている昼間に照明をつけた執務空間で仕事を行い、春や秋の爽やかな風を取り入れることもなく空調が効いた室内で生活し、普段は雨水を下水や河川に流しておきながら、渇水になれば遠くのダムの貯水量を気にかける。これらは私たちが普通に体験していることであり、決して私も例外ではありません。
エネクスレインは、「環境からの働きかけを活かすことができる建築デザイン」が大切だと考えます。
それは、光や熱、風といった使い捨てにしても一向に構わない環境からの働きかけを上手に取り入れ、不要な場合には適度にさえぎり、そして使い終わった後は適度に環境に戻すことのできるデザインを構築することに他なりません。私たちはいつの間にか、使い捨てへの意識が過剰になってしまったせいか、本当に使い捨てにしても構わない、環境や自然が持つ素晴らしい働きかけと、その大切な機能を見失っている気がします。
だからこそ「環境に対して配慮する」ことだけが大切なのではなく、「環境からの働きかけに配慮し、それを活かす」ことも極めて重要だと考えます。そして、これまで築いてきた技術と建築的な手法を上手に組み合わせることで、次の世代へと継承されるような新たな建築を実現して行くことが求められているのではないでしょうか。

3 多世代に継承される価値のある資産の創造
土地の値段が高い日本では、土地の効率的な有効利用と安定した資産活用という至上命令のもと、特に都市部において建設と解体が幾度となく続けられてきました。その流れは少しずつ変わろうとしてはいますが、建築は相変わらず土地に付随する付帯構造物のように扱われています。お金を生み出さない建物は、その土地に建ち続ける価値がないという判断が脈々と続いているのです。
極端なことをいえば、私も含めて建築に携わる人たちの多くが、計画をできるだけ早く進めて、短時間で設計を終わらせ、確認申請の状況を見ながらすぐに着工し、厳しい予算に見合う最短工程を描いて無理にでも竣工させ、そして投資資金をいかに早く回収するかに精力を注いできました。無論、それを一概に非難することはできない一面があることは確かです。
エネクスレインは、「多世代継承建築」を目指します。
建設と解体という独特の慣習が日本の社会に根付いてしまっている理由は、専門家に限らず多くの人が、日本には木の文化があるからだと指摘します。しかし、歴史的建造物を見れば木造建築が長寿命なのは明らかです。むしろその背景にあるのは、自然災害や火災といった人災に対して機敏に対応しなければならなかった影響の方が大きかったと捉えるべきでしょう。
河川の氾濫や都市部での火災、あるいは地震が幾度となく繰り返されてきたからこそ、何世代にもわたる長寿命建築は一般の人にとって考える必要のない建物であったのです。そういった木の文化の中に、これまでとは異質な鉄やコンクリートといった素材が持ち込まれてきました。石の文化ともいえるそれらの建築材料を、建て直しが容易に可能な木造と同じ感覚のまま扱い続けていることに問題があるのです。
エネクスレインは、「多世代に受け継がれて行く価値のある建築」を創造します。
多大な労力をつぎ込んで建てたにもかかわらず、建物を30年で解体するということは、少し極端な言い方をすれば、最後の10年間はごみの中に生活しているようなものです。にもかかわらず、多くの人が巨額の借金をし、長期の返済が終わった頃には資産価値がないというのは、大型の耐久消費財を購入しているのと同じことにほかなりません。
最近になって急に100年建築や200年建築が取り沙汰されていますが、それはあくまでも結果であって、何百年も建ち続けることのできる建築が求められているのではなく、次の世代に引き継いでもらえるような価値のある建築を創造して行くことが大切なのではないでしょうか。

4 部材の物理的特性を活かした建築: 継続加筆予定
5 数値評価できない価値の再認識: 継続加筆予定
2009年7月15日/15.7.2009