注文住宅への注文 その2 2011.09.06
「間取りと熱中症」にも書いたけれども、部屋を小さくすると人体は壁からの熱放射の影響をより受けやすくなる。しかも通風がない場合は、空気の大きな揺らぎや動きがなくなってしまう。暑い夏にトイレの個室に入ったときにとても暑く感じるのは、近距離の壁に囲まれているのと、空気の動きがないというのも、その理由に一つだろう。
「注文住宅に対する注文」が、部屋数の指定から始まるということについて、何とも言えないわだかまりを感じるのは私だけだろうか。大きな住宅でゆったりとした間取りを実現できるなら、それが一番だ。でも平均的な規模の住まいで、小さくても良いから個室がたくさん欲しいという建築主の要望を素直に受け入れるべきものなのだろうか。
おそらくほとんどの工務店などは、建築主に対して、ほど良く助言をしつつも、つつがなく受注したいという気持があるだろうから、小さな部屋が並ぶ間取りでも、無駄な抵抗をすることなく受けてしまうというのが現実ではないだろうか。だから、冒頭に紹介した大工さんのような発言が出るのだろう。
そうなって来ると、もはや家とは何かという根底的な問題まで掘り下げて考えないといけなくなる気がする。人はなぜ家を建てるのか。家が欲しいのか、部屋がたくさん欲しいのか、独立した空間が欲しいのか。そして、あれほどこだわって。子供のためと思ってつくった子供部屋は、いつしか物置になって行く。そんな家が日本中にたくさんあるはずだ。
家を建てたある方の話を引き合いに出してみる。竣工後、その方の弟さんも家を建てたいと言い始めた。その大きな要望の一つが「子供部屋は絶対に二つ」だった。それに対し、ある設計事務所は1.5部屋という案を提示した。弟さんは、自分たちの要望を満足させる案ではないことに対し、ひどく憤慨し、どうやら両者間にしこりが残ったらしい。
何だか身につまされる話だ。それは、子供のために家を建てようと言っている人たちのすべてを敵に回してしまいそうな感じさえ受けるが、その設計事務所の提案も私は理解できる。建築主の要望は多い。でも予算を考慮すると、どこかを削らなくてはならない。譲れない部分と、諦めの気持が日々交錯して行く。
設計事務所は、建築主の要望を聞き入れながら、それを噛み砕き、何か良い方法はないかと思案する。建築主が、子供部屋は二つ必要だと言っても、違う解を探そうとするその行為は、建築主にしてみれば単なる意地悪にしか思えないかもしれない。どうして素直に要望を聞き入れないのかという疑問は、不安やわだかまりとなって行く可能性さえある。
加筆訂正:2011年9月8日(木)